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「「「ご卒業おめでとうございます!」」」
「ありがとう。」
「盛大なお迎えだな〜」
『うっわすご、全員入るとこんな狭いの。』
「絵面が寒ィな。」
意を決して部室の扉を開けた黒尾。その瞬間後輩達のしっかりと揃った声が道香達4人を迎える。昨日も会った為になんだか変な感じがするが。
入って早々黒尾に背を押された道香は、中心に居た山本に紙袋を手渡す。
『これ、一人ひとつね。名前書いてるから間違えないように!』
「こっこれはもしやッ」
『うん、頑張って作った。』
「……アリガトウゴザイマス」
『はーい、虎まだあるから意識保って。』
両手を合わせた山本が後ろに倒れかけると、すかさず支えた福永が代わりに紙袋を受けとり中を見れば。名前が書かれた裏面に小さくメッセージがありぐっと道香に向けて親指を立てる。黒尾や夜久にも書いたのだが、彼らはまだ気が付いていなかった為道香はさすが、と微笑んで。
そのやりとりを見ていたらしい黒尾と夜久が鞄を探り貰った菓子を探す隣で、道香は一冊のノートを取り出す。
「……道香サンそれは、」
『ジャーン!初心者でもわかる基本的なルールとマネ仕事のマニュアルです!』
「天使だッ!!」
『マネが入って来た時、こういうのあった方がいいかなって思ってね。』
表紙に並ぶ綺麗な文字に、山本が顔を両手で覆った。
コツコツと一人書き進めてきたそれ。道香自身も初心者で入りルールを覚えるだけでもかなり時間がかかったのだ。仕事を覚えるのもまた然り。自分の時もこういうものがあればよかったと思っていたのが始まりだった。
そしてそのノートを山本に託すのにも、道香なりの理由がある。
『マネ探し、最後まで協力してくれてありがとう。結局私じゃ見つけられなかったけど、次入ってきたら虎から渡してね。』
「そんッそんなッ!あざっす!!」
『あ、私の友達の妹が来年入ってくれるかも。』
「マジっすか!?」
『マジマジ。』
道香の言葉に反応したのは、山本ではなく灰羽だった。最後列から飛び出た頭が道香に向けて笑顔を振りまいている。その間山本や福永の視線は、道香から渡されたノートに注がれていて。
一ページ一ページ、丁寧な文字とイラストが並びかなり時間がかかったことが誰が見てもわかる出来栄えだ。注意書きでドリンクの濃さは好みに合わせなくていい、重い物は持ってもらえなど、力を抜いていい事柄まで書いているのが道香らしい。
道香の三年間が詰まったそのノートに、山本が豪快に泣き始める。それを皮切りに芝山や犬岡までもが道香達に感謝の言葉を述べ初めて。
しんみりした空気を作らないようになるべく明るく振舞っていた道香も、涙腺を刺激される。
「「「ありがとうございました!!!」」」
そして泣きながら頭を下げる彼らに、道香や夜久の目からも一気に涙が溢れた。
「道香さん!これ貰って下さい!」
『うッ…!花とか…!どんだけ泣かす気なの…!』
「道香さんお疲れ様でした!」
「…マネージャーやってくれてありがとう。楽しかった。」
『キァンマァァ!!』
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