225



卒業式を間近に控えた、最後の登校日。本日は卒業式の予行練習兼最終確認の日だ。それぞれ受験を終え久々に顔を合わせる同級生に話が盛り上がる中、3年5組は全く別のことで盛り上がっていた。





「ウソ…!!」

「マジでホントに!?」

「すごくない!?感動した!」

「黒尾このヤロー!」





勿論それは、手を繋いだまま教室に入って来た道香と黒尾のことだ。どよめく教室内で、女子が目を輝かせて道香を囲む。あっという間に黒尾は男子に囲まれ、しばらくの間質問攻めにあうこととなる。





「受験もおめでとうだけど、本当におめでとう!」

「可愛い道香もついに黒尾のモノか…」

「道香顔真っ赤じゃん!」

『これ以上言わないで恥ずかしいから…!』

「………黒尾、大丈夫かな。」

「絶対我慢できないに1000円。」





仲の良い数人が道香の頭を撫で、照れた様子の道香を見て顔を覆う。年頃ではあるが、反応が純粋でこの年にしては珍しい。勝手に賭けが始まっている隣でどう告白されたのか、と盛り上がる友人達。騒がしくも嬉しいそれに道香が薄く微笑んでいると、前に居た友人がこれまた嬉しそうに目を細めている。





「上手くいって良かった。私も嬉しい。」

『……うん、ありがとう。』





体育の時に、母のように微笑んでくれた彼女だ。これまた母のような暖かみのある笑顔を向けてくるものだから、道香もつい素直に笑ってしまって。ほんのり頬の赤らんだ嬉しそうなその笑顔。見ていた女子達がガシッと手を取り合った。





「…よし、泣かせたら黒尾ボコろう。」

「なんか心がキレイになった。」

「純粋すぎて眩しい…」

「黒尾もよく彼氏面頑張った…!」





明るくて誰とでも仲良くなれてしまう道香を健気に思う黒尾という2人の図は、今この瞬間に幸せそうに笑う2人の図に塗り替えられた。

prev / next
[back]
×