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『〜〜〜っ惜しい…!』
直井と猫又の言葉から、余計な考えが消え頭がクリアになった道香。先程よりもコートが良く見え、選手達の動きに意識が奪われていく。興奮故に握ってしまったノートにシワが寄ることも気にせず、膝に置いたバインダーのスコアシートにまた目を向けた。
今までのどの試合よりも、孤爪の思惑通りに進んでいる。標的である日向を封じ、守備がどんどん仕上がってきて。焦らずじっと耐えながら、少しずつ点差を埋める彼らは、直井の言葉通り強くなっていた。
「球彦呼びますか」
「まだ様子を見よう。早流川戦を戦い抜けたんだし。それに、がっかりするには早い気がするねえ、研磨。」
それでも、何度も攻撃をしてくる烏野にこちらの体力も削られている。いつもより動いていることもあってか、孤爪に疲れが見え始めた。直井が猫又に声をかけるとほぼ同時に道香が手白を振り返るも、すぐに体制を戻す。
そしてその直後、烏野と同点になり道香が両手で拳を作った。
『ブレイクッ同点ッ』
もし、このセットをとれば。そこまで考えかけるも、コートの中に居る彼らに思考を止める。今すべきは、全力の彼らを全力で応援すること。これまでもそうだったように。
唇を真一文字にキュッと結ぶと、白熱する試合に道香の応援にも熱がこもっていく。いつのまにかかなり力が入っていたらしく、握りしめた拳は白くなっていた。
音駒が続けて得点し、つい逆転。加速する守備は烏野にはキツイだろう。そして日向も上手く封じ続けている。もう少し、もう少しで。
そう思った瞬間、今日1番、いや今までで1番高く飛び上がった日向。道香も言葉を忘れて息を呑んだ。
「オッ!ホホ!」
『今なんかめちゃくちゃ高かった気が…』
「だいぶ飛んだなあ!」
ケラケラと、楽しそうに笑う猫又を思わず凝視してしまう道香。あんなもの、合宿でも見たことがなかった。彼らはまだ成長するのか。
あっという間に調子づいた烏野に半歩のリードを奪われてしまう。それでも何故か、焦りよりも高揚感が道香の頭を侵食する。
「道香。」
『ハイ!走おいで!』
猫又の声だけでまたグルンと首を回す道香が犬岡を呼ぶ。あの日向を初見から抑え続けた、音駒でもトップクラスの反射神経を持つ犬岡。GWの練習試合時とはポジションが違うが、彼の好敵手でもある。
ああ、きっとまだまだ終わらない。先程より何倍も嬉しそうな道香を見て、猫又達は愉快そうに口元を緩めた。
『面白くなってきましたね!』
「手堅い系だったのになあ。道香も触発されたか?」
「良い顔になったじゃねえか。」
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