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【log】

止まった歯車は2度と動かない

記憶


旦那が好きだった
旦那が居れば何も要らないと本気で思ってた

少し広がった紅い髪
彫りの深い茶色いガラス玉


全てが作り物だと分かっていても
それすら愛しくて



「旦那」

(『あぁ?』)


「好きだ。うん」

(『…本当にお前はそればっかだな』)


当たり前だ、とオイラは目を細める


「旦那しか要らない、うん」

(『…うぜぇ』)


無表情の中にうんざりしたような色が浮かびその後一瞬だけ
憂いを帯びた色がガラス玉の奥で揺らめく


オイラはその色に気付かない振りをして
温もりの無いボロボロになったその身体を抱き締める


カシャ…と力無いその身体は
オイラの中にすっぽりと収まった


「旦那しか、要らない」

そう呟いて
ヒビが入り、血の流れた後の身体を抱き締め続ける


【オイラも連れてって】


言葉を飲み込んで
ただただ記憶に浸り続けた

14 Feb.,2013
独言



どんなに待っても
帰っては来なかった


『お父様』

『お母様』


ただいまと抱き締めて欲しい
また一緒に寝て欲しい

独りは淋しいよ
涙は枯れてしまったよ



――――…プツンと途切れた糸を再び繋げる事もなく、僕はただただ人形を見つめる

似てるけど、違う
温もりのない作り物の両親を見下ろして、呟く


「サヨナラ、」



13 Feb.,2013
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