きみが泣いている夢を見たから
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私が泣いてる夢を見た。

なんて、おかしな話だけれど。
見覚えのある道で小さい頃の私が、独りで泣いていた。
私は他人のように、そんな“私”を見つめていて。

あの日だって分かった。
私がクイーンに助けて貰った日。寒い寒い、雪が降った日。
そしてこれは、クイーンに助けて貰えなかった私なんだって分かった。

道のはじっこで、膝を抱えて泣いていた私に誰も見向きもせず、足早に通り過ぎて行く。
私は、動けずに“彼女”を見つめていた。

“彼女”の目がこっちを向く。

背中にぞくっと、寒気が走った。
もし、私だったら。“彼女”が私だったら。
違う。あれは私じゃない。
私は此処にいる。

そこで、その夢は終わった。

はっと気付けば、いつものトルバドゥールの部屋だった。
だけど、誰もいない。
クイーンも、ジョーカーも、RDも、何処にも。
みんな居ない。
冷たい床に座り込んで、膝を抱えた。
嫌、嫌だ。独りは嫌だ。

いつもみたいに、笑えなかった。
涙しか出なかった。



「……! …………なまえ!」

名前を呼ばれて、目を覚ました。
ぼやける視界に入ったのは、心配そうな顔をした、

「…………ジョーカー……?」

そう呟くと、ほっとしたような顔をした彼は、私の目元を拭った。
思わず目を瞑って、また開けば少し見やすくなった視界。

「……大丈夫ですか?」
「……なんで……」
「うなされてるのが聞こえてきたので……勝手に入ってすみません」

私、泣いていたんだろうか。
泣いていたのは、夢のなかでだけだったはずなのに。
そんなことを考えたら、夢と現実が混ざってしまった気がして、また泣いてしまった。
ボロボロと涙が流れて、枕に落ちる。
いつも冷静な彼が、慌てた顔をしているのが見えた。

「なまえ、」

困ったように私の名前を呼ぶジョーカー。
それだけじゃ安心出来なくて、温もりを感じたくて、起き上がって彼に腕を伸ばせば、一瞬迷ってから優しく抱き締めてくれた。
背中に腕をまわすと、ジョーカーは私の頭をぎこちなく撫でた。
あたたかい。

安心したはずなのに、涙はまだ止まらなかった。



きみが泣いている夢を見たから。


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