03 小戦
もしゃもしゃと、祐希が唐揚げを咀嚼するのを見てから悠太にドヤ顔を向ければ、なんだか悠太は不機嫌顔。
…食べなかったからってそんな顔しなくても…!なんか怖いから!!
反対に祐希は満足そうに、まだ唐揚げを咀嚼している。よく噛んで食べるのは大切だよね
「奏歩、もう一個食べたい」
「ん、いいよ」
祐希は唐揚げがお好きなようで。
悠太の持つ私のお弁当から唐揚げを取ろうとすれば、ひょいっと届かないところにお弁当を持ち上げられてしまった
「ちょ、悠太さーん?」
「祐希にあげないで自分でちゃんと食べなさい。それともなんですか、俺の唐揚げが食べられないとでも?」
「いや、あの…」
「じゃあ、口開けて下さい」
「…う、うぐ…」
目の前に差し出される二つの唐揚げ。お腹一杯のときにこれは結構キツい
…祐希には食べさせられないし、こうなれば…!
「…悠太、自分で食べるからお箸貸して?」
「本当ですか?」
「うん!絶対食べるから!!」
仕方ない、と言いながらも、渡してくれる悠太から唐揚げ付きのお箸を受けとる
よし、作戦開始!
「悠太、あーん!」
「!んぐっ」
私が食べるのを見守っていた悠太の口に唐揚げをin!!これでまた一つ減ったぜ☆
…悠太が怒ってなきゃいいんだけどなぁ
そっと悠太を見てみると、無表情で唐揚げを食べている。
…怖い
ごくり、悠太が唐揚げを飲み込むのを見て、私も息を飲む
「…奏歩」
「は、はい!」
「もう一個食べるよ」
「え、あ、うん?」
「あ、悠太ずるい。俺も食べたい。奏歩食べさせて」
「うん」
よくわからないけど、二人ともお弁当が大好きらしいです。
浅羽お母さんの料理の腕はやっぱり最高だ!
今日は残さずに食べられるよ!ラッキー!
「抜け駆けはさせません」
「そっちこそ」
るんるん気分だった、私は祐希と悠太が静かに火花を散らせていたことになんて気がつかなかった。
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