09 待てない人



「…ありえねぇ」


顔を真っ青にした要が気持ち悪そうに口元に手を当てる。「…うぇ、」とか聞こえてくるんですけど


「だ、大丈夫ですか?要君…」


背中を丸めて呻く要の背中を優しく撫でながら心配しているのは、悲しいことに春ちゃんだけだ。


「要、もしかして乗り物好い?」

「え、有り得ないでしょ」

「有り得ないよね」


と、ぼそぼそと呟いているのは、双子と私。要をこっそりと貶しているのは私と祐希。

…勘違いされないように言っておきますが、これはあくまでも、愛情表現ですからね?


「うっせー、聞こえてるんだよ。お前ら」

「だって聞こえるように言ってるんだもんね?」

「うん」


ねー、と祐希と顔を合わせれば、額に青筋を立てる要。ピキキッて音がしそう

要のキレている様子を見て、子供が「ママ、あれなに?」と聞くと、すかさずお母さんが子供を抱えて「さぁ、行きましょう」と去っていく

別に見ちゃいけないものでは無いと思うけどね


「はいはい、ストーップ。」


悠太は両手を広げて二人を制しながら、そう淡々と言った。頼れる兄貴此処に降臨


「俺と祐希で飲み物買いに行ってくるから。奏歩たちはここにいて」

「はーい」


言うと同時くらいに悠太は祐希の腕をがっちり掴んだ。


「悠太隊長!私はオレンジジュースが飲みたいであります」


びしっ、と敬礼のポーズを取って悠太に頼むと、悠太は祐希を引きずりながらこっちにやって来る

なんなんだろう?頼むならお金を渡せと、やだお財布には59円しかないのに!

なんでそれだけのお金で遊園地に来たかは、企業秘密です


「了解しました。奏歩隊員。」


「だから、いい子に待ってるんだよ」、とぽんぽん私の頭を撫でる悠太の手はあったかくて非常に気持ちがいい。

だがしかし、だ。
「いい子に待ってるんだよ」って、私はそんなに子供じゃないから!子供じゃないからね!ここ重要!!


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