見える人
ざわり、ざわり
何だか胸の奥がざわざわと音をたてる
身体中が何かを拒否する感覚。いや拒否じゃない。"拒絶"する感覚
あぁ、彼は間違いを起こすのだろう。だけど―、
***
なんて言うのだろう。まぁ、あえて言うならばげっそり、としている
そう、お兄ちゃんが最近げっそり、しているんだ。
ついでに今日は+α的な感じでぼぉーっともしている
「お兄ちゃん大丈夫?」
「え、あぁ、大丈夫」
なんとも頼りない足取りでお兄ちゃんは学校へと出掛けていく。…不安だ
「お兄ちゃん、気を付けてね!」
「あぁ、いってきます」
…激しく不安。それとともに嫌な予感も襲って来る
そのままお兄ちゃんの背中を見送る。
「…お前はそんなに夏目が心配か?」
いつの間にか私の後ろに来ていたニャンコちゃんが口を開いた
「うん。心配だよ、お兄ちゃんはすぐに無理をする」
「それはお前も同じだろうが、阿呆が」
「そんなこと、ないよ?」
猫にしては大きめなその体を持ち上げて抱き締める。つるふかとした感触が気持ちいい
お兄ちゃんはいつも無理をする。昔からずっとそう
「夏目には私がついているから大丈夫だ」
ぽふっとニャンコちゃんの柔らかな肉球が私の額を叩く
なぜか懐かしく優しい感覚が私を包む。
ニャンコちゃんがいるからお兄ちゃんは大丈夫。自分にそう言いきかせてニャンコちゃんをぎゅっと抱き締めた
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