ダム底の燕
「暑い…!」
『だらしないな。これくらいで』
「うるさいよ、暑いもんは暑いんだから仕方ないでしょ」
蝉の声がやけにうるさく耳に響く。暑さとうるささで苛々してしまう、今日はそんな夏の日
お兄ちゃんは、友達と遊びに出掛けているので、白銀と一緒にいても大丈夫
だから部屋で扇風機の風に当たりながら、白銀とのんびりしていた
そうしていたらいきなり一階がバタバタと騒がしくなった。…何かあったのかな?
白銀を部屋に置いて、一階に降りてみる。
すると、そこにはぐったりしたお兄ちゃんと、慌てふためくお兄ちゃんの友達。そして急いで氷を用意している塔子さんがいた
すっと一気に冷たいものが体を這った
「塔子さん!お兄ちゃんどうしたんですか!?」
「菜和ちゃん!貴志君、行き先で倒れちゃったらしいのよ!!」
お兄ちゃんに視線を向ければ、荒く息を繰り返すお兄ちゃんの後ろに何か黒いものがあるのが見えた
…アレのせいか…!
祓ってしまおうか、そう考えたけれどここには塔子さんもお兄ちゃんの友達もいる。下手なことができなかった
何もできない悔しさを強く拳を握ることで、無理矢理に抑え込み、見えないモノができる最大限のことを手伝った
早く、お兄ちゃんが目を覚ますように…!
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