人間退治
「人間退治、ね…」
『全く下らん話だ』
中級がお兄ちゃんに付きまとっていた理由はそんなものだった
なんでも最近八ッ原に引っ越してきたお坊さんが地を清めているらしい
力の弱い下級の妖たちはそれで追い払われているとかなんとか…
それでお兄ちゃんに付きまとって、人間退治しろっておかしいでしょ
確かに住みかを追われてるっちゃ追われてるけど人間に人間退治って色々危ないでしょうが
とりあえず、今は空から八ッ原の森を見下ろしているのだけれど、特に変わった様子はないみたいだ
…いや、あった
「ギン、下りて」
『?なぜだ』
「いいから、早く」
白銀の足が地面についた瞬間、私は白銀の背中から飛び降りる
確かこの辺にいたはず…!
「いた!」
森の中で一人、ぐったりと倒れている男の子。制服がお兄ちゃんと一緒だ
「大丈夫ですか…?」
ゆさゆさと体を揺すってみると、彼はゆっくりと目を開いた
「…っ、大丈夫だ、ありがとう…」
「そうですか、よかった…」
手を差し出すと、彼はその手に掴まりゆっくりと立ち上がった。…結構大きい
黒髪に優しそうな目、どことなくお兄ちゃんに似た何かを持っているような感じがした
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