露神
「あ、見てギン。」
『なんだ?』
それは白銀(人間の姿)とのお散歩の帰り道のこと。
私は森の中に小さな祠があるのを見つけた
ちょこりと、果物が一つお供えされている。
『祠か…、多分これは露神のものだな』
ギンは祠をつつきながら、呟いた。
…露神?露の神さまってことだよね
ギンを見上げると、ギンは面倒くさそうに前髪を持ち上げながら教えてくれた
『こいつは昔、"露神"その名の通り、恵みの雨を降らせたって崇められた奴だよ…昔の話だから、今はどうなってるのかは知らねぇけど、な』
「ふーん、そうなんだ。じゃあ」
祠の前に屈みこんでたまたま持っていた飴玉を一つ、祠にお供えする
一個より、小さいものでも二個あった方がいいでしょう?
露神さまの祠をじっと見つめてから、立ち上がる。
『今日はいい天気ですなぁ…』
不意に聞こえたその声に、私は小さく微笑んだ。
「そうですね。」
と。
『ほら、帰るぞ』
「うん」
白銀に腕をひかれながら、祠を後にする。
背中に優しい露神さまの視線を感じながら。
そしてその視線と同時にわかってしまった。
この妖はもうすぐ消えてしまうということを―
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