8





「―…、―菜和…!」


「、お兄ちゃん…?」


ゆっくりと目を開く。
目の前にはメリーさんとお兄ちゃん。


『大丈夫か?』

「…うん、楽器は大丈夫…?」

『無事だお前が守ってくれた』

「よかった…」

『―菜和、立てそうか?急げばまだ道に間に合う。無理なら…』

「俺が抱き抱えていく」


ふわり、ふわり
意識が沈む、アサギ、伝えたいことがあるんだね…


『行こう菜和。行こう――』


遠くで聞こえる声


「『―叶うならもう一度だけでも弾きたいと思った。ずっとあの方のためだけに弾いてきた。』」


見える、アサギが磯月の森で見た景色が…


『だから、もしもう一度弾くことが叶うなら、優しくて大切な友人のため―』


アサギが微笑む


『あなたのために弾きたいと思っていた。アカガネ、聴いてくれますか?』


――遠く、遠くで音楽が聴こえた。聴いたこともないような美しい音

でもその音は確かに私の指から空気を揺らして…

アサギは私からはがれていった――


***


次の日。

アサギとアカガネは帰っていった。

アサギが離れた今はもう私は妖が見えてはいけない

だから小さく二人の後ろ姿に手を振った


「―さようなら、またいつか…」


[ 8/8 ]
[] []
[list][bkm]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -