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「―…、―菜和…!」
「、お兄ちゃん…?」
ゆっくりと目を開く。
目の前にはメリーさんとお兄ちゃん。
『大丈夫か?』
「…うん、楽器は大丈夫…?」
『無事だお前が守ってくれた』
「よかった…」
『―菜和、立てそうか?急げばまだ道に間に合う。無理なら…』
「俺が抱き抱えていく」
ふわり、ふわり
意識が沈む、アサギ、伝えたいことがあるんだね…
『行こう菜和。行こう――』
遠くで聞こえる声
「『―叶うならもう一度だけでも弾きたいと思った。ずっとあの方のためだけに弾いてきた。』」
見える、アサギが磯月の森で見た景色が…
『だから、もしもう一度弾くことが叶うなら、優しくて大切な友人のため―』
アサギが微笑む
『あなたのために弾きたいと思っていた。アカガネ、聴いてくれますか?』
――遠く、遠くで音楽が聴こえた。聴いたこともないような美しい音
でもその音は確かに私の指から空気を揺らして…
アサギは私からはがれていった――
***
次の日。
アサギとアカガネは帰っていった。
アサギが離れた今はもう私は妖が見えてはいけない
だから小さく二人の後ろ姿に手を振った
「―さようなら、またいつか…」
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