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ゆらり、ゆらり
一定のリズムで体が揺れる。
直接伝わってくる温もりに不思議な懐かしさを覚えた。
あたたかな、幸せ
「――菜和、菜和…!」「――っ、」
ばっ、と目を開いて飛び起きる
不意に気配を感じ振り返るとそこにはメリーさんがいた。
「――メリーさん?」
『…起こしたか』
「ううん、大丈夫だけど…、あ、アサギなら寝てるから、話したいのなら…」
「三本だ。アサギの右手の指はもう三本しかない」
メリーさんは淡々と話始めた。アサギの病気、そしてアサギにもう一度琴を弾かせたいと願う理由を――
『もう夏目にも話したんだ。…それまでどうか力を貸してくれ…』
「―うん」
妖も人も変わらない。
ただ、大切な人のために…
***
「くそーないなー」
「見つからないね」
今日は林で切り株探し
これが見つかれば材料が揃い琴が出来るらしい。でもなかなか探す切り株は見つからない。
「あっ、本当だあった…」
「えっ?どこどこ」
「ここだよ」
『でかしたぞ夏目!!』
お兄ちゃんが指さした先には確かに竹の子に貫かれている切り株があった
メリーさんはそれを切ると琴の胴の形に削り始めた
「…はぁ」
ザラりとした熱っぽいだるさが体を蝕んでいく。アサギが弱ってる証拠
「菜和、大丈夫か何だか熱っぽくないか?」
「大丈夫、だよ…?」
心配そうに顔を覗き込んでくるお兄ちゃん。本当に優しいんだから…、
「アサギが琴を弾きたがってるんだから私が出来ることはなんだってしてあげたいの、力を貸してあげたいの…」
少し頬を緩めればお兄ちゃんは困ったように微笑んだ。
「膝、貸してやるから少し寝たらどうだ」
「…、ありがとう」
お兄ちゃんの言葉に甘えてゆっくりと目を閉じた
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