5




メリーさんから話を聞いたところによると、アサギは自分の身代わりとして磯月の湖に琴を沈めてしまったらしい

それで琴をつくることに。まず材料集めから。

天然池にいる「線引き」という鯉そっくりの妖怪を捕まえることに

一生懸命に線引きを探すお兄ちゃんとメリーさん。私も一緒に探そうとしたのだけれど、お兄ちゃんに全力で止められたので今は二人を眺めています


「ねぇねぇ、アサギ」

『はい、なんでしょう?』

「メリーさんはアサギのことが大好きで大切なんだね…」

『ふふ、そうでしょうか?』

「だってアサギのために一生懸命じゃない。」

『メリーさんは優しいんですよ。』

「見た目によらず、って感じかな」


静かに二人で笑いあった。

その日線引きは見つからずまた次の日に探すことになった。

その日もその日もなかなか線引きは見つからず毎日天然池に行くようになってしまった。

そして日を重ねることにお兄ちゃんの疲れも目に見えるようになってきていた


「今日は私も一緒に探すね!」

「ダメだ」

「やだ。やる」


お兄ちゃんが止めるのをスルーして池の中へ水の冷たさが体を一気に冷やしていく


「あー、もう、具合悪くなったらすぐに言うんだぞ?」

「はーい」


心配したような声をかけてくるお兄ちゃんに自然に顔が緩む、本当に優しいんだから


『あっ、見ろ夏目と妹!』

「へっ」

『居たぁぁかかれぇぇーーーっっ』

「!!」「はーい!」


ばしゃばしゃと池の水が跳ねる。それがいつもよりもキラキラして、見えた

それはきっとアサギが感じている世界。


『…と、とったぞ〜〜!!』

「本当に!?」


メリーさんの声に振り返れば、確かにその手には口に針り糸のついた魚が握られていた


「じゃあ、材料集めはこれで終わり?」

『いや、次は胴だ。"地表に頭を出す際の竹の子に貫かれている切り株"を探すぞ!』

「お兄ちゃん、行ける?」

「あぁ、」


お兄ちゃんの返事を聞いて歩き出そうとしたとき―


「ーっ、」


くらりと景色が揺れた。
力が入らなくなった体は重力に従って倒れ込んでいく


「!菜和っ!!」


ぷつり、と意識が途切れた


[ 5/8 ]
[] []
[list][bkm]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -