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「…っ、」


意識が浮上する

まだぼんやりとする意識の中で、視界を動かしていくとあの妖が倒れていた


「生きているよ」


それから名取さんの話を聞いた。名取さんもおれと同じだった。お互いに何かを伝えたいと、話をしていたかったがけだったんだ―

こうして妖怪祓いの騒動は解決した。名取さんは撮影を終え、今日帰ってしまうらしい。あの女の子の妖怪は、「柊」という名をもらい、名取さんに仕える妖の仲間に入ったようだ


「まったく君のような無茶なのは助手にできないな」

「そうですか。それは残念だ」

「かわいくないなぁ」


名取さんは、きっとおれなんかよりも妖が見えることで苦しい日々を送ってきたのだろう。這い回る痣に神経もすりへらされたのだろう。けれどやはり…


「甘いと言われようと、あなたのやり方には賛同できません」

「それもいいさ。何も同じ意見でなければならないということでもないだろう」


ゆっくりと青い空を雲が流れていく


「他とわかりあうのはムズカしいことだよ。だれにとっても、ね。困ったことがあったらいつでも話してくれ」


名取さんは少し微笑みながら言った。


「―私も友人の力になりたいからな」


おれは知った。
同じものを見、同じものを感じる人とさえすれちがってしまうことを。そんな悲しみを皆は知っていたんだと…

風がそっと頬を撫で、通りすぎていく

あいかわらずの妖の見える日々。けれど僕もみんなと同じように人の心は今日も見えない

そして僕は、いつか見てやるぞと目を凝らすんだ



***


一匹の妖は緩やかに微笑みを浮かべた


『よかったな。お前の大事な友人は助かった』


記憶の中の白い少女は微笑んだ。とても安心したように、嬉しそうに――

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