3
止めさせなきゃ、いけない。
助けなきゃ、いけない
その一心で雷の落ちる陣の中へと飛び込んだ。
バチバチと雷が肌を焼いていく、凄まじい痛みが体に走る、それでも、それでも、あの妖を助けなくちゃいけないんだ―
飛びそうになる意識を必死に保ちながら目を開き続ける
意識がそのとき、ふっと柔らかなものが守るようにおれたちを包んだ
目を開き守ってくれているものの姿を見れば、それは先生と見知らぬ白い大きな狐の妖だった
その次の瞬間、ドンッという音ともに起こった強い光の中に俺の意識は飲み込まれていった―
***
『ねぇ、どうしたの?変なお面…、手から血が出ているよ』
―少し昔の彼女の記憶
まだ幼い名取さんが怪我をしている妖に手を差し出し、手当てをする
悲しさを、寂しさを、苦しさを隠すようにしながら淡々と話す名取さん
『誰かが僕を退治してくれればよかったのに』
そう呟いた小さな名取さんに妖は言った
『…人はね、人の子にはね不幸を招けるような力なんて無いんだよ』
流れ込んでくる彼女の気持ち…
『お前は優しい子だよ。優しい普通の子供だよ』
(だって私はお前に会えて、こんなに嬉しかったのだから―…)
ふわり、一陣の風が吹いて景色が変わる
『―、――!』
白い髪を靡かせた少女が手を振る
儚そうに見えるのにどこか力強い、そんな存在感
『―また、来たのか。飽きない奴だな』
『だって、楽しいんだもん。貴女といるの』
楽しそうに、楽しそうに微笑む少女。でもそれは一瞬かげのある表情になった
それを隠すように彼女はまた笑う
『あのね、お姉さん』
『…なんだ』
『私、もう――』ゆるやかに少女から放たれる光。
二人の姿は見えなくなった…
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