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「菜和?」
「なに、お兄ちゃん?」
いつもと同じ、だけど違う。
いつもと同じ笑顔なのに、何かが明らかに違うんだ
燕に頼まれて手を繋いで帰った日、途中で菜和を見かけた。でも、一瞬でその姿は消えてしまった
見間違いだったのかもしれない、でもどうしてもそうは思えなかった
一瞬だけだったけれど菜和の苦しそうな顔が見えた気がしたから…
目を閉じればすぐに浮かんでくる、今にも泣き出してしまいそうな菜和の顔
本人に聞いてみたら、「寝ぼけてたんじゃないの」って笑われた
でも、でも、その日からなんだ
菜和の笑顔が変わってしまったのは
塔子さんも滋さんも気付いてはいないけれど、おれにはわかった
菜和の笑顔が無理矢理に作られたものになってしまったことに
「おい、夏目どうした?」
「え、いや、何でもない」
ニャンコ先生の声に、はっと意識を戻す
そうだ、今は燕のために浴衣を手に入れなくちゃいけないんだ
面の紐をぎゅっと強く縛り直して、おれは祭りの中に足を踏み入れた
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