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少し薄暗い森の中を黒髪の彼と一緒に歩く。白銀も一緒にいるのだけれど、彼は見えていないらしい
「あのさ、ありがとうな。」
「え?…あぁ、どういたしまして」
「おれ、田沼要。…その、よかったら名前教えてもらってもいいか」
「夏目菜和です。よろしく田沼さん」
にこっと笑うと、田沼さんはちょっと頬を赤くして微笑み返してくれた
「…あぁ、でも、田沼さん、じゃなくて要でいい」
「要…、くん?」
「じゃあ、それで」
流石にあきらかに年上に見える人を呼び捨てにできるような精神を私は持っていなかったので、最後に"くん"をつけた
要くんは、ちょっと苦笑いをしたけれど私の気持ちをわかってくれたようで、要くんになった
本音だと"要くん"でもキツいよ私。
同級生とかでも名前にくん付けとかなかなかしなかったから、ちょっと照れ臭い感じがする
「おれは菜和って呼ばせてもらってもいいか」
「もちろんですよ、要くん」
それからはまぁ、他愛もない話をして要くんの家、と言う廃寺まで一緒に歩いた。
途中、途中に妖がいたけれど白銀がいるせいか皆逃げていった
とりあえず、無事に廃寺について安心した
「おかえり、要」
「ただいま」
廃寺につくと、人の良さそうなお坊さんが出てきた。どうやら要くんのお父さんらしい
にこにこと笑うお坊さんは、私の姿を見るとちょっとだけ驚いた
「そちらのお嬢さんは?要の彼女かい?」
「「はい?」」
思わず被る私と要くんの声。
いや、彼女って、さっき会ったばっかりですけど私達、まぁお坊さん知らないと思うけど…!
「…菜和は、まだ彼女じゃない」
「そうか、そうか」
要くんとお坊さん、何やら楽しそう。
お話に参加しようと思ったけど、空がもう赤い。お兄ちゃんが帰ってきてしまう
「じゃあ、私はこれで」
田沼親子に手を振って、見えなくなったところで森の中に待たせていた白銀に乗って家に帰った
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