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その日は遅くにお兄ちゃんが意識を失ったままニャンコ先生に連れられて帰ってきた。
お兄ちゃんからは微かに山と妖の匂いした。最近探していた妖がようやく見つかって、無事に名前を返せたようだった
白銀に聞いた話だけれど、妖に名前を返すのはとても大変らしい。集中力と体力をかなり必要とする、と言っていた
すやすやと眠るお兄ちゃんの髪の毛を撫でながら、小さく呟いた。
「―お疲れ様、お兄ちゃん」
***
「露神さん、こんにちは」
『今日も来てくれたのかお嬢さん。ありがたいねぇ』
露神は小さくなっていた。今まで以上に。気配も薄くなってきていた
…あぁ、もうお別れが近いんだね
「露神さん、貴方は人間が好きだった―?」
これで最後になってしまうのだろう。いつものように飴玉を一つ起きながら私は聞いた
『あぁ、好きだよ。人とは可愛いものだ…』
「そっか」
小さくなってしまった露神さんを手のひらに乗せて、優しい顔をしているだろう露神さんに微笑んだ
「私、露神さんのこと好きだよ」
『それはありがたい』
「だからまた、会いましょう?」
『ふふ、そうだねぇ…』
優しい神さまを祠に戻し、私は七つ森を後にする
さようなら、人を愛した優しい妖。
さようなら、愛しい兄の友人
またいつか、会いましょう―
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