04


先生はしばしの沈黙の後、オレの腕をガッと掴み部屋に引き込んだ。呆然としているイタチの目の前で扉が閉まり、腕を掴まれたサスケもポカンとする。

「よしサスケくん、古文と漢文どっちからやる?」
「え?」
「え、古典やるんでしょ?」
「あ、はい」

まるで何事もなかったかのように先生は席についてサスケを待つ。聞きたいことはたくさんあったが今は勉強しなくてはならない。とりあえず助動詞の識別からやろうと思った。

「あ、助動詞ね」
「とりあえず活用と接続は覚えたんですけど意味の識別が出来なくて」

実際、国語の教師から助動詞のプリントをペラリと渡され覚えてこい、と言われただけなのだ。なのに文中でこれは使役、これは尊敬とかよく意味が分からないうちに先生は進めていく。クラスの誰もがハテナハテナという感じであった。

「未然形接続の『る』『らる』からやるとね…」

先生はペンケースからシャーペンを取り出して二回ノックする。そのあとルーズリーフに識別法がサラサラと書かれていく芯の先をサスケは憮然と眺めていった。

「古典も暗記だからね、サスケくん暗記得意なんでしょ?」
「はい」

じゃあ直ぐに出来るようになるよ、と言ってその紙を渡される。

「この三つの助動詞の判別法、五分で覚えて」

よーいスタート、と言った先生に慌てて暗記を開始する。いきなり五分。なかなかスパルタな先生らしい。それから世間話をちょくちょく挟みつつ時計を見れば約束の二時間を過ぎていて驚いた。随分夢中になってやっていたらしい。そんなサスケに名前は「何だ、サスケくん古典苦手じゃないじゃない」とクスリと笑った。曖昧に笑い返した所で、今日の授業は終わりらしくお疲れさま、と言われた。二時間の充実感と疲労感で肩をぐるりと回す。

■ ■ ■


先生と母さんがリビングで話こんでいるあいだ、手持ち無沙汰になったオレは先ほどのプリントを眺めていた。とりかへばや物語だというその物語は題名こそ、耳にしたことはあるものの読んだことは無かった。先生が書き出した一部分を訳してくることが次回の宿題らしい。背景知識は教えてもらったから何とかなるだろう。月二回の授業は案外楽しいかもしれない。

「サスケ、ちょっといい?」
「今行く」

母さんに呼ばれてリビングに行けば、紅茶とケーキを出されて食べている先生とその隣にイタチ、先生と向かいあわせに母さんが座っているから必然的にイタチの目の前に座ることになった。

「次、いつ来ていただく?」
「オレはいつでもいいけど」
「サスケくんは部活とか入ってないの?」
「あ、はい」
「じゃあ再来週の水曜日の四時半とか大丈夫?」

大丈夫だと答えれば先生は小さな手帳に書き込んでいく。その手帳の中身をイタチがちら見したのが見えた。何してんだよ。思わず足を蹴る。

「じゃあこれで。ご馳走様でした」
「ありがとうございました」

玄関先で先生を送りだせば何故かイタチが駅まで送ると言い出した。母さんが「そうね」なんて言うから先生は驚いていた。きっと自分も驚いた顔をしているのであろう。

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