04

何の嫌がらせだか知らないけれど、もう三日間も深夜勤だ。もちろんサスケくんが、私の勝手にシフトを移動させたことが原因である。店長も私とサスケくんはセットだと勘違いしているらしい。おかげでサソリさんへのメールも返信する時間がほとんどない。バイトが終わって、学校に行って、家帰って寝て、バイトに行く。この繰り返しで身体もクタクタ、シフトを移動させた張本人であるサスケくんも流石に疲労の色が滲んでいた。

「という訳なんです」
「そんなことよりデートに誘われたのか…気をつけろよ」
「何がですか?」
「35の親父と二人っきりは危ないから気をつけろ、ってことだ」
「あたしのこと娘みたいに思ってるんじゃないですか?」
「……」

軽く常連と化すお兄さんのお腹の傷はすっかり癒えたらしい。見せてやろうかと言われたが流石に遠慮した。お腹スベスベなんだろーなとか考えてしまう自分が悲しい。いつも通りサスケくんは仮眠中でコンビニ内には私とお兄さんしかいない。疲れた顔をしていると言われて今週のシフトはもちろん、全然関係ないものまで愚痴っていた。一応、サスケくんやサソリさんの名前は伏せて。

「というかお兄さん、お家帰りましょうよ」
「そんな気分じゃないんだ」
「……」
「お兄さんか、どっちかって言うとイタチさんと呼ばれたいな」
「……」
「何故そこで黙る」

お腹を刺されたお兄さんの名前はイタチさんと言うらしい。先程買った缶コーヒーを片手にイタチさんは私を見つめる。イケメンに見つめられることに慣れてない私は必然的に顔が赤くなった。

「今度来た時は名前で呼んでくれよ」

イタチさんが帰ったあと、一人残された私はどういうリアクションを取れば良かったのだろう。



サスケくんは自分をいたぶる趣味でもあるのか。月曜日火曜日水曜日と地獄の深夜勤から解放されたと思ったら、木曜日と金曜日にまで追加したらしい。他のバイト生は楽になって嬉しいようだが、私はもう色々限界だ。逃げ出そうとした所をサスケくんに確保された瞬間、死神的な何かが「お疲れ」と囁きながら肩を叩いていく幻覚まで見えた。

「サスケくぅぅぅぅん…」
「捨てられた子犬みたいな面してる」
「違う、そこじゃない。見て、私のこの隈。きっと明日には我愛羅くんみたいになってるよ」
「目力アップ」
「違う!」

心なしか、いらっしゃいませ、の声も死んでいる。ふらふらの私を多少心配してくれているらしいサスケくんは力仕事を全てやってくれたが、どうせなら夕方のシフトにしてくれた方が良かった。仮眠室で横になる私の頭を撫でてくれるのも嬉しい。だがその優しさが今は怖い。

「もう駄目疲れた…」
「なぁ、名前」
「なに?」
「日曜日、行くの止めろよ」
「だって約束しちゃったし…映画見たいし」
「映画なら俺が奢ってやる」

店長の計らいで仮眠室で二人っきり。サスケくんの膝枕をお借りしてるため、下から彼を眺めることになった。真剣そうな顔で、もっと違う何かを言いたそうな顔をする。

「行くの、やめろよ」

言いたいことは、それだけ?


あれからサスケくんと気まずい。結局、私はサソリさんと映画に行ったし、サスケくんも無理に深夜勤にはしなくなった。夕方なら二人っきりにはならない。だから前よりも距離は出来たんだと思う。今まで通りサスケくんは私を家まで送ってくれるが、部屋まで上がることも無くなった。

「酷い顔してるぞ」
「お父さん…」
「ぶっ殺されたいか?サソリ様だろ」
「パパ…」
「……」

イライラしながら髪を掻き上げるサソリさん。商品はお酒だったけど年齢確認などする余裕もないので無言でレジ打ちを始めた。

「あそこの店員、めっちゃお前のこと見てるぞ」
「あー、多分年齢確認してないからですよ。大丈夫です」
「…オイ」

ごめんなさい、大丈夫じゃなかったようです。私を押しのけてレジに立ったサスケくんはまるで喧嘩を売るようにサソリさんを睨みつけていた。…え?え?と混乱する私に余裕の笑みを浮かべるサソリさん。年齢確認か、やっぱり年齢確認しなきゃいけないのか。だよね、最近入ったアルバイト生が誤解してサボっちゃ拙いもんね。

「名字は今業務中なので妨害するような行為は謹んでください」

年齢確認ではなかったようである。むしろ雑談がいけなかったと。ナンパを助けてもらった時と同じセリフだったが、今回のサスケくんは本当に怒りかけてる。サソリさんの余裕な態度が日に油を注いでるのだろう。止めた方がいいのかな、これ。だが止められる気もしなくて店長に指示を仰いだ。

「サスケくん、名前ちゃんのことが好きなんだね」

店長…。そのセリフ、絶対に今私が聞いてはいけなかったもののような気がします。



今日の体育はバスケである。男子チームと女子チームに別れて試合しているため、男子チームの試合中、女子は応援に回る。体育の先生がガイ先生なことが原因かはわからないが、恐ろしく白熱した試合になっていた。女子チームの試合なんか温い。温すぎる。まさか生でダンクを見る機会が来るとはおもわかなかった。

「ナルトもサスケくんもすごいね」
「そ、そうだね…」
「ちょっとヒナタ大丈夫?顔赤いよ。もしかして試合で疲れちゃった?」
「大丈夫…」

とはいえヒナタの頬は赤い。話しているのにこちらを向いてくれない彼女が気になって、その視線を追う。ナルト?体育着を肩まで捲っているため見える筋肉のついた腕。中腰でドリブルしながら、首襟をパタパタさせている。滴る汗に半開きの口から見える赤い舌。

「ナルト、凄いフェロモン出てるね」
「うん…」

でも個人的にはちょっぴり汗をかくヒナタの方がエロい。体育着だから胸が強調されている。いいな、私ももっと胸欲しい。

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