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リヴァイは銀行の入り口という入り口にカメラを設置し、少し離れたビルの一室でカメラの映像を前に半日以上粘っていた。客の入り口、従業員の入り口、駐車場まで合計八ヶ所のカメラの映像をリヴァイは気を抜かずに見つめ続けた。名前の顔を知っているのはリヴァイだけなのだ。各所入り口にはリヴァイ班の精鋭が見張りについている。名前が確認でき次第、リヴァイが指示を飛ばす段取りになっている。

「……!!」

リヴァイの三白眼が開かれた。田の字を二つならべるように置かれていたテレビのなかの、一番右上のテレビにリヴァイの意識が全て行った。つかみとるようにマウスを引き寄せ、乱暴にクリックする。拡大、拡大。その女のスーツの後姿に見覚えがありすぎた。女の髪は金髪だ。防犯カメラに写った名前の髪の毛の色は茶色だった。だが、そんなことはあまり関係無い。名前は会うたびに髪色や髪型を変えている。

「………」

リヴァイは下唇を噛み締めながらモニターを凝視する。確証が欲しかった。名前がマリア銀行の入口の前で顔をあげる。その顔をリヴァイははっきりと見た。

「グンタ、目標が銀行の中に入った。金髪のパーマをかけているグレーのスーツ姿の女だ。身長160半ば」
「発見しました」
「店内のペトラと合流しろ。絶対に逃すな」
「承知いたしました」

銀行前で待ち合わせを装っていたグンタがリヴァイからの連絡を受けて、名前の後を追うように銀行内へ入った。銀行内で順番待ちをしていたペトラはグンタに向かって手を挙げる。グンタはジェスチャーで名前のことを伝える。

「エルド、監視を変わってくれ。俺が行く」

リヴァイがソファーから立ち上がりジャケットを羽織った。濃紺のジャケットの中には防弾チョッキもつけている。もちろんリヴァイ班全員が防弾チョッキと拳銃の所持をしている。念には念を入れて、だ。リヴァイはモニターをつけっぱなしにしたまま部屋を飛び出した。


■ ■ ■


鳴り響くサイレンの音。首都駅前はパトカー、救急車、消防車と、その周りを取り囲むように報道陣のバンがひしめき合う。土煙から逃れるようにでてくる人々は誰も彼も負傷を負っている。現場に駆けつけたエルヴィンはリヴァイのスマートフォンに電話をかけ続けていた。ミケもペトラやオルオに電話をかけ続けているが、一向につながらない。爆発があったと通報を受けてから二十分。エルヴィンの腕時計は三時二十一分を指そうとしていた。

「詳しい状況は?」
「目撃者の証言ですと、銀行の前に大きなバンが止まっていて、その中からでてきた奴らが……バズーカやロケットランチャーのようなもので銀行を破壊したらしい。外から、だ」
「…信じがたいな」
「全くだ」

エルヴィンは表情をこわばらせて未だ火の手が残るマリア銀行を仰いだ。リヴァイ達は名前を追っていた。この件に彼女が関係あるのだろうか。無関係というわけではなさそうだ。

「ミケ、リヴァイらしき人物が見つかった。あいつは銀行内にいなかったらしく、爆発の煽りを受けて身体を強打しているのと、崩壊した瓦礫の下に埋まっていたらしい。まあ、自力で這い出てきたらしいけど」
「さすがリヴァイだな…他の班員は?」
「まだわからない」

ナナバの報告にミケとエルヴィンは安堵と不安の入り混じった表情を浮かべた。ナナバは少し先に止まる救急車を指さす。あそこでリヴァイは応急手当を受けている。意識はしっかりしているが、頭を打っている可能性があるため病院に搬送されるらしい。エルヴィンは現場をミケに任せることにした。

「俺はリヴァイに話を聞いてくる。ここは任せた」
「分かった。なにかあれば報告する」
「ああ」

エルヴィンが警察手帳を見せ、つきそう旨を救急隊員に話すと、酸素マスクを当てられていたリヴァイが起き上がろうとした。エルヴィンがそれを軽くとどめる。リヴァイは口元のマスクをはぎとり、エルヴィンを手招いた。

「状況は?」
「報道はテロだろうと騒いでいる。お前は何を見た?」
「悪いが直接何が怒ったのかは見ていない。銀行内に入る名前を確認してモニター室から飛び出て、そこの角だ。銀行の角を曲がろうとした時に爆音が聞こえた。そこからは、あまり覚えていない……俺の班員は?」
「まだ見つかっていない。彼らも外にいたのか?」
「いや、恐らく中だ」
「そうか……」

生存は絶望的だとエルヴィンは言わなかった。一階は全焼している。二階も被害は尋常なようだ。リヴァイは何も言わないエルヴィンに察したように目を閉じた。

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