ひまわり | ナノ
昼下がりの爆弾

「どこ行くんだ?」
「よく遊びに行ったあの大きい公園。覚えてない?」
「覚えてる、懐かしいな!」


空は晴れていて風もちょうどよく気持ちの良い天気だった。特に何の予定も無かった私はルフィくんを誘って、近くにある公園に行くことにした。
徒歩だと少しかかるが、小さい頃はよく遊びに行っていた場所だ。とても大きな公園で遊具も充実していたし、小さな丘のような広場で寝転んで三人で空を眺めたのは良い思い出だった。
さすがにこの年になって遊具で遊ぼうとは思わなかったが、公園に併設したカフェもありゆっくりできるだろうと思って出かけることにしたのだ。

あちらこちらと視線と共に足取りもフラフラしているルフィくんの歩き方は昔のまんまだった。色んなものに好奇心を持つ彼の世界では、きっとあらゆるものが興味の対象なのだろう。懐かしくて思わず笑みがこぼれると、ルフィくんは私の方を振り返った。


「なんか面白いものでもあったのか?」
「ルフィくんが昔と変わらなくて面白いなぁと思ったの」
「なんだそれ」


おれも結構変わったけどなー、と本人は少し不服そうな返事をする。
信号が赤になり立ち止まったルフィくんの隣に立った。


「背だって伸びたしさ」
「確かに、昔は私より小さかったのに」
「凛子は小さくなったな!」


頭をぽんぽんと撫でながら無邪気な笑顔でそう言われると、笑顔は昔のままなのに見上げる角度が新鮮で、また心臓が変な音を立て始める。
「私だって身長伸びたよ」と目を反らしながら言うと、「じゃあおれの方がたくさん伸びたんだな」と嬉しそうに言っていた。


公園をたっぷり散策したところで、ちょうどカフェが見えてきた。腹減った!とルフィくんはカフェの屋根を見つけた途端走り出す。彼の瞬発力は衰えることなく私をヘトヘトにさせる。そんないきなり走れないよ、と思っていたら気付かぬうちに私はルフィに手首を掴まれていたようで、何故か彼と一緒に走り出していた。


「こ、こんな走ったの、いつぶりだろ……」
「何食おうかなぁ!全部美味そうだ!」


ショーケースに並ぶ食品サンプルを見てルフィくんはやたら上機嫌だった。隣で息を切らしている私のことなどお構いなしである。ようやく私が未だに肩で息をしているのに気付いたようで、「大丈夫か?」と呑気そうに聞いてきた。


「ルフィくんの体力は底無しだね」
「凛子はもうちょっと鍛えた方がいいかもな」
「ははは…」


真面目な顔でそう言われてしまうと苦笑いしか出来なかった。お店に入り、ルフィくんは店の人気メニューとかかれた特大カレーを注文していた。私はサンドイッチを頼み、二人で和やかな食事を楽しんだ。
ルフィくんの食べっぷりもまた相変わらずで、あっという間に減っていくお皿の上のカレーを見ているとなんだか不思議な気持ちになった。


「ふう、食った食った」
「本当によく食べるねぇ。まさかあれを2回もおかわりするとは思わなかったよ」
「美味かったなぁ」
「あ、お会計は私がするから!」


伝票を持って行こうとするルフィくんを慌てて止める。
なんで?と不思議そうな顔をするルフィくん。だって、今日は私が誘ったし私の方が年上だし…と言うと、年は関係ないだろーと笑いながら彼は言った。


「私は社会人でお金もあるし、ルフィくんにお金を出させるなんて…」
「いいんだ。おれが払う。それに、おれの方がたくさん食ったしな」
「でも」
「デートは、男がえすこーとするもんなんだろ?エースに聞いたんだ!」


にかっと笑ってルフィくんはレジへと向かってしまった。
私はその場で立ち上がったままぽかんとする。今、ルフィくん、「デート」って言った…?
そんな風に意識なんてしなかったのに、途端このお出かけがルフィくんとのデートだと思えてきて顔が熱くなる。ルフィくんにとって、今日私と出掛けたことは「デート」だと認識しているのだろうか。デートって、どういう意味だと思っているのだろう。エスコートって、ルフィくんはどういうつもりでその言葉を使ったのだろうか。

さっきお店に入る前に猛ダッシュしたときに掴まれた手首が、今更熱くなるような気がした。

お店を出て、「ありがとう、ごちそうさま」と伝えると、相変わらずの笑顔でルフィくんは「おう!」と短く返事をした。




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