ひまわり | ナノ
グレーゾーン

翌朝、体がずっしりと重く感じて目が覚める。昨日はそこまで飲んだつもりは無かったのに…。そう思いながら目をこすると、見慣れた黒い髪の毛と黒い瞳が至近距離にあった。


「……?」
「遅起きだな、凛子は」


寝起きの私の顔を覗き込んでいるルフィくんの姿に驚いて、私は「わあ!」と大きな声を出した。
ルフィくんは耳を塞いで「ビックリしたぞ!」と驚いた様子だったが、驚いているのは私の方である。何故ルフィくんが私の部屋にいるのか。ずっしりと感じた重さは私の上に乗っている彼の物理的な重さだったのだ。


「昨日の夜、扉に鍵さしっぱなしのまんまで部屋の中入ってたぞ」
「え、そうだったの…気付かなかった」
「鍵はそこ置いといたから」


テーブルの上に置かれた鍵を指さして、ルフィくんはニコニコと笑っていた。昨日の不機嫌はやはりただの気まぐれだったのだろうか。
ルフィくんのころころと変わる表情を見るのは楽しい。朝から上機嫌のルフィくんになんだか私も嬉しくなった。


「今日は休みなのか?」
「そうだよ。ていうかルフィくん、重いからどいてくれない?」
「あぁ、悪い悪い」


ルフィくんはそう言ってようやく私の上からどいてくれた。私は布団から起き上がって伸びをする。
こうやって家に突然やってくるのは、昔の頃と変わらなかった。ルフィくんとエースはよくいきなり家に遊びに来て私を誘ってくれた。懐かしさで、頬が自然と緩む。


「どこか出掛ける?」
「んー…。凛子さ」


せっかくの休日で天気も良いし、何処かに出かけるのも良いかもしれない。昨日連絡できなかった埋め合わせもしたいし。そう思って聞いてみた。
しかしルフィくんは床にあぐらをかいて座って膝に頬杖をつきながら、さっきのニコニコ笑顔を引っ込めて真顔で私を見上げた。


「まだエースのこと、好きなのか?」


真剣なまなざしに、思わずドキッとしてしまう。
まただ、記憶にある幼いルフィ君とのギャップに戸惑いを隠せない。
突然の質問の意図が分からず、私の心臓はドギマギと大きな音を立てる。つぶらな瞳は、私をなんだか不思議な気持ちにさせた。


「な、ないよ。エースはただの幼馴染だよ」
「本当かあ?」
「ルフィくんに嘘つかないよ。第一、好きだったのだってずっと前のことだし」


私はこの空気をなんとかしたくて笑ってそう返す。ルフィくんは「ふーん」と納得してるのかしていないのかよくわからない返事をして目を逸らした。
再会したときもだけど、ルフィくんはやたらエースのことにこだわる気がする。まあ、昔から何かとエースに張り合っていたから、その延長線なのかもしれない。
一度早くなった鼓動は中々おさまらない。私は着替えるから、と言ってルフィくんを部屋から追い出した。
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