貴方の隣


ローと付き合い始めて数日たった。私達は夜だけでなく、昼間も時々会うようになっていた。
街の中心部で彼を待っていると、見知らぬ男達に声をかけられた。見た目からして海賊であり、しかしこんなことは日常茶飯事なので私は目を合わせることもなく手を払いのけた。


「ねえ、せっかくだし俺らと遊ぼうよ」
「ごめんなさい、私人を待っているから」


しかし彼らは諦めずに、払いのけようと出した私の右手を掴んで引っ張ろうとした。
その時、私の手を掴んでいた男の手が、より強い力で誰かに捕まれてさっと引き離された。
顔を上げると、そこには不機嫌そうなローが立っていた。


「お前ら、俺の女に何か用か?」
「……っち、男連れかよ」


海賊達もどうやら馬鹿ではなかったらしい。一瞬でローとの差を感じたのか、すぐに手を引いて去って行った。
ローは、多分相当強い。彼が戦う姿は初めて会ったときに助けてくれた時しか見ていないが、不思議な能力を持っていることもあり、街にいる無名の海賊たちが彼に対して一目置いているのをなんとなく感じていた。
懸賞金こそまだかかっていないが、恐らく彼らの名前はすぐ有名になるだろう。そんな確信があった。


「ごめんなさい、迷惑かけちゃって」
「迷惑じゃねぇえよ。ああいうの、よくあるのか?」
「それなりにね。こういう街だから仕方ないわ」


私は肩を落としてそう言った。ローはちらりと私を見て、そして手を引いて歩き出した。明るい時間に人前で手を繋ぐなんて、ローにしては珍しい。嬉しくて、私も彼の手を握り返した。


「ローが私のこと、そうやって言うの、初めてだね」
「…茶化すな」
「嬉しかったのよ。私はローの女だもの」


ローは好きだとか、そういう直接的な言葉をくれなかった。そういう人なんだと分かっていたから気にはしていなかったが、いざこうやって他人に自分の女だと言っているのを見ると、心が高鳴った。彼にとっても特別な存在であると、そう信じることが出来て嬉しかった。
街を歩いていると、ローは近くを歩く女の人の視線を独り占めしていた。彼は目付きこそ良くないが、高身長で女の人を魅了する容姿である。そんな彼の隣にいられることは、少し誇らしかった。


「私なんかよりも、ローの方が異性から声をかけられることが多そうだけど」
「全部無視してるから、よくわかんねぇ」
「あら、冷たいのね。でも、じゃあこうやって隣を歩けるなんて、光栄だわ」


おどけたようにそう言うと、ローも少し笑って私を見て「うるせぇよ」と言った。


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