「熱、下がんないな」
「うー…」


ベッドで寝ている私の横でチョッパーくんが冷たいタオルを頭にのせてくれた。そこへナミちゃんとロビンちゃんが様子を見にやってきた。


「エリスー、調子はどう?」
「だめみたい、体がだるいよ」
「つらそうね、今日は無理しないほうがいいと思うわ」
「そんなあ…」


久し振りの島への上陸。それなのに、昨夜から熱が下がらなくて、チョッパーくんにも今日一日は船で休んでいろと言われ、私はお留守番となってしまった。


「私も行きたかった…」
「ログが溜まるまではここにいるんだから、焦る必要はないわよ。今日はゆっくり休んで、明日まわればいいじゃない」


ナミちゃんにそう言われ、不満を言いながらも私は布団に深く潜り込んだ。
ゾロさんと一緒にまわる、って約束したのになあ。
それが一番の心残りだった。ずっとずっと楽しみにしていたのだ、今日がくるのを。だからこそ、風邪をひいてしまったのは、本当に悔しい。


「私一人でお留守番かあ…」
「俺が残るぞ、看病しなきゃいけないしな!」
「チョッパー君…!」


にこにこと笑いながら言ってくれるチョッパーくんの優しさに甘えようとしたが、私は頑張って首をふった。


「ううん、気持ちは嬉しいけど…。チョッパー君、楽しみにしてたでしょ?ここでしか手に入らない医学書があるって。私、どうせ寝てるだけだろうし、行ってきていいよ?」
「でも、俺は医者だし…」
「私は大丈夫だから、ね?むしろ、私のせいでチョッパーくんを拘束する方が心苦しいよ」
「…本当に、いいのか?」
「全然大丈夫。楽しんできて」
「ごめんな、エリス。なるべく早く帰るから!」


ナミちゃんやロビンちゃんに続いてチョッパー君も部屋を出て行った。
遠くからルフィ君達が騒ぐ声が聞こえて、いつのまに静かになっていた。
私以外誰もいない船。感じる静けさに、チョッパー君の前では強がったものの、やっぱり心細かった。


「ゾロさんと、まわりたかったなあ…」


ぽつりと呟いてみる。部屋に響いたその声に、しかし、返事が返された。


「風邪なら、仕方ねえだろ」
「!?」


私は声が聞こえた方向を向いて急いで起き上がった。
案の定、そこには見慣れた緑色の髪の毛。ゾロさんがいた。


「え、え…?」
「まだ熱あんだろ、寝てろって」
「そうじゃなくて…え?なんで、ゾロさんがここに…、みんなと行ったんじゃなかったの?」


私が慌てて質問攻めにしたから、ゾロさんはちょっと困ったような顔をして、とりあえず身体を起こした私をゆっくりともう一度ベッドに横たわらせた。


「別に、特に予定もなかったし。暇だから看病してやろうと思って」
「ゾロさん…」
「あ、でもナミには黙っとけよ。女部屋勝手に入ったなんて知れたら面倒だからな」


頭をぽりぽりかくゾロさんに、だけど私は未だ頭が追いつかない。


「でも、わざわざ看病なんかしなくても大丈夫だから、本当にみんなと行ってきていいよ?」
「しつけえな、行くあてもねえんだから、ここにいるしかねえだろ」
「でも…」
「一緒にまわる、って約束したじゃねえか。俺が街へ行く理由はそれだけだ。お前が熱で動けねえなら、俺もここにいる。お前がいなきゃ、出かける必要もねえから」


ゾロさんはそう言って、ベッドを背もたれにしてあぐらをかいて寝始めた。
私は、ゾロさんの言葉にきゅんとして、別に深い意味はないって分かっているけど、さっきよりも鼓動が激しくなった胸をぎゅっと握った。


「…早く、風邪。治すね」
「おう」
「そしたら、私が回りたいとこいっぱい付き合ってね」
「わかってるって」
「あと、ゾロさん」
「ん?」
「いつまで、ここにいる?」
「エリスがいてほしいなら、ずっといるぜ」
「ほんと?」
「ああ、他の奴らが帰ってくるまで」
「……ありがとう」
「別に、さっさと寝ろ」
「うん、おやすみ」
「おやすみ」


ゾロさんがすぐ近くにいる。そのことが私を安心させた。
風邪のときってどうしても淋しくなるから。それをわかってて、ここにいてくれてるのかな。そんな風に、自分の都合のいいように考えてしまって、今日はいいような気がした。



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