マルコ先生の言葉が、頭から離れない。
『教師っていう立場を忘れて付き合うなんて、ありえない』
先生がそうやって断言したことが、何故だかすごく悲しかった。あの日からなんとなく、先生と会っても前みたいに話すことが出来なくて、廊下で見かける度に避けてしまっていた。
そんな日が続いて、ある放課後、ユキと寄り道していると「何があったの?」と心配そうに彼女に聞かれた。
サッチ先生の件は、あの日は大荒れだったものの今はもう大分落ち着いたようだ。元々、恋に憧れていただけなのかも、と彼女は笑っていたが本心まで察することは出来なかった。
私は、少し悩んでから、マルコ先生との会話のことを話した。


「ありえない、ってなんでそう言い切れるのかなって…。だって、恋愛は誰でもしていいものでしょ?そんな風に言われたのが、すごいショックだったんだよね」
「そんなことがあったんだ…。ていうか、やっぱマルコ先生って頭固いね、想像通り」


ユキは眉を寄せてそう言った。私がずっと元気が無かったのを気にしてくれていたらしく、理由がわかってほっとしている表情だった。


「でも、まさか七花がマルコ先生のこと好きだったなんて、全然気付かなかったよ」
「…え?」
「だって、好きだから、先生がそう言ったことにショック受けたんでしょ?……え、まさか、自分が好きだってこと、気付いてなかったの?」


私はユキの言葉に目を見開いた。私が、先生の事を好き…?
そんなこと、全く意識していなかった。だけど、それは確かに今の自分の抱いている感情にしっくりとくるものだった。先生のことが好きだから、付き合うなんてありえないって、そう可能性を閉ざされたことが、ショックだったんだ…。


「ユキに言われるまで、そんなこと思いもしなかった…」
「七花ってちょっと鈍感だよね。でも、やっと七花にも春が来たんじゃん!」
「春って…。もうフラれたみたいなもんだよ、私なんか」


溜息を吐くと、ユキが怒ったように私に言った。


「まだ何もしてないのに、諦めるなんて早いよ。マルコ先生だって口ではそう言ってるけど、恋って気付いたらしてるものだし、絶対ありえないなんてことが、ないから!」
「でも…」
「本人に直接そう言われたら、弱気になるのもしょうがないけど…。でも、七花は本気で好きなんでしょ?大丈夫、本当に好きなら、ちゃんと伝わるよ」


最近失恋したばかりだというのに、ユキは私を一生懸命励ましてくれた。その優しさが嬉しくて、私は「うん、そうだね」と頷いて笑顔を見せた。
そうだ、まだ何もしてないんだ。私が自分の気持ちに気付いただけ。諦める必要なんて、どこにもないんだ。




 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -