次のテストが一週間後にせまっていた。
苦手な数学は、マルコ先生との補習のおかげでかなり捗っていた。ユキが補習に出ている間、ずっと付きっきりで見てもらっているのだ。これで点数が取れなかったらどうしよう、と変な不安が逆に募る。


「今日さ、放課後どっかに寄って勉強して帰らない?」
「うーん、でも勉強は一人の方がいいと思うけど…」
「お願い!私、絶対家だとやらないから、誰かいて見張ってもらわないと寝ちゃうって!」
「見張ってもらわないとって…。まあ、用事があるわけでもないし、いいよ」
「良かった!ありがとう、七花」


ユキにお願いされて、放課後駅の近くにあるカフェで勉強をすることになった。
店内は丁度良い混雑具合だった。お互い飲み物を頼んで、教材を机の上に広げた。ユキはサッチ先生の影響で英語ばかりやっているらしく、他の教科はほとんど手つかずだったようだ。
私は時々彼女に聞かれたところを教えながら集中して勉強をした。
小一時間経ったくらいで、ユキが休憩しようと言いだし、私もそれに賛成した。二人でおしゃべりをしていると、店の入り口の扉が開いて新たなお客さんが来たのでなんとなくそちらに目をやると、やってきたのはエースだった。


「あ、エースだ」
「本当だ。エース!」


ユキはエースに手を振った。ユキも私の知らない間にエースと仲良くなっていて、私達三人は学校の廊下などで一緒に話をするくらいの仲になっていた。
エースも私達に気付いて手を振り返した後、頼んだ飲み物を持ってこちらの席にやってきた。


「お前らも勉強?」
「うん。あ、よかったら一緒にやらない?」
「じゃあ、ここ座るぜ」


エースはそう言って空いていた私の隣の席へと腰掛けた。エースも教材を取り出して、三人で勉強を再開した。私は、ユキだけじゃなくてエースにも分からないところを教えてあげたりした。


「エースもユキも、やればできるんだから、サボらないでちゃんと前から勉強してればよかったのに」
「そうは言ってもさ、それが難しいんだよなぁ」
「そうそう」
「ユキは英語しか勉強しなさすぎだし」
「だって、サッチ先生のテストは絶対良い点数取らなきゃいけないじゃない!」


ユキの言葉にエースは眉をよせた。


「お前、趣味悪いって。サッチの何処が良いのか俺にはさっぱりわかんねぇよ」
「いくらエースだからって、サッチ先生の悪口は許さないんだから」
「まぁまぁ、二人とも」


私は二人を宥めながら、ぶるぶると震え始めた携帯電話をポケットから取り出した。開くと、お母さんからのメールだった。いつの間にか結構時間が経っていたらしい。そろそろ帰ってきなさい、という内容だった。


「私、そろそろ帰らなきゃ」
「あれ、もうそんな時間?じゃあ、今日はもう帰ろっか。ありがとう、七花が教えてくれたおかげで助かった!」
「俺も。サンキュな、七花」
「ううん、全然構わないよ」


私達三人は荷物を片付けて店を出た。駅で私達は別れて、エースとユキは同じ方向だからと一緒の電車に乗って帰っていった。



 
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