エースと仲直りをした次の日、お昼休みになり一人教室を出て行ったユキを私は追いかけた。


「ユキ!」
「……七花」
「一緒に、お昼食べよう?」


私がそう言ってお弁当を見せると、ユキは困ったような顔をしていた。しかし、上手く断る言葉を探せなかったみたいで、結局は微妙な顔をして頷いてくれた。私達はお弁当を片手に屋上へと上がる。三人がギクシャクする前までは、よくここでお昼を食べていた。
適当な場所に腰を下ろし食べようかと声をかけようとしたときに、ユキは「ごめんね」と呟いた。


「え?」
「七花のこと、避けててごめん。…エースが七花のこと好きなのは、本当はもっと前から知ってた。ずっと一緒にいたんだよ、さすがに気付いちゃうよ」


ユキは俯いて、ゆっくりとそう話した。私も謝った方がいいのか、でもそれもどこか違う気がするし、と悩んだ挙句何も言わずにユキのことをじっと見つめた。


「昨日、エースから電話がきたの。今から会えないか、って。ほら、私達最寄りの駅が一緒だから」
「そうだったんだ…」
「うん。それで、聞いた。…エースを振ったことも。ごめんね、七花」
「……なんで、ユキが謝るの?謝るなら、むしろ私の方…」


俯いて喋るから、私はユキの表情が分からなかった。ただ、なんとなく、泣いているように見えたから、私はそっと手を伸ばしてユキの頭を軽く撫でた。いつもマルコ先生が私にやってくれるように優しく、暖かく。
その感触に、ようやくユキは顔をあげて、そして少し潤んだ瞳で私を見て笑った。


「七花だって苦しかったよね。ごめんね、そんな思いさせちゃって。分かってた事だけど、それでもやっぱりエースが七花に好きって伝えてるところ見ちゃったら、苦しくて、混乱しちゃって…」
「ううん、私があの時すぐに返事していればよかったんだよ。そしたら、ユキだって不安にならずに済んだ」
「違うの。分かってるの。七花がすぐにエースに返事しなかったのは、エースのことを友達として大切に思ってるからだって、私だって分かったよ。分かってたのに、ごめん」
「ユキ……」
「ねえ、また明日から、三人でお昼ご飯、食べれないかな…?」


ユキは少し不安そうに瞳を揺らしてそう聞いた。私が思っていたことをちゃんと理解してくれていて、そして再び仲良くしようと言ってくれたことが嬉しくて、私は笑顔で答えた。


「うん。それで、放課後も一緒に遊ぼう?前みたいに」


「そうだね」とユキも頷いて、それから彼女は「ありがとう」と少しだけ涙をぬぐって笑った。



 
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