「七花、なんだ、まだ帰ってなかったのか」
「あ、エース。エースこそ、みんなと一緒に帰っちゃったのかと思った」
「腹痛くてトイレこもってたら置いてかれたんだよ…。なんでまだ残ってたんだ?」
「ゴミ捨てに行って、それで立ち話してたらちょっとね…」
「ふーん。まあ、帰るか」


文化祭は三日後に迫っていた。校舎の裏にゴミを捨てに行って、その帰りにマルコ先生と会って立ち話をしていたら、クラスの皆は既に帰ってしまったようだった。
私はエースと二人で学校を出る。こうして二人で帰るのはいつ振りだろうと考える。ユキがエースを意識しだしてからは、なるべく三人、もしくはユキとエース二人で帰らすことを優先してたから、すごく久し振りだし珍しい感じがした。


「なあ、文化祭誰かとまわる約束してるか?」
「え?うーん…、シフト入ってない時は多分ユキと見てまわると思うけど…。あ、エースも一緒にまわる?」


駅に着く間際。ついさっきまで話していた内容とは何の脈略もなく、エースはそう聞いてきた。特に約束はしてないけど、お互いのシフトが無い時は多分ユキとまわるだろうなと思っていた。
もしエースも一緒に回る事になったら、ユキは喜ぶだろう。そう思って提案すると、エースは一瞬だけ目を逸らして、だけどすぐに笑顔で返事をくれた。


「あー…、そうだな。じゃあ、三人でまわろうぜ」
「うん!楽しみだね、準備も頑張らなきゃ」


私がそう言うと、エースは少し困ったように笑って「そうだな」と言った。彼の表情の理由が私には理解できなくて、何か引っかかるところでもあるのかと聞こうと思ったが、その前に駅に着いてしまい、結局何も聞けないまま私達は「じゃあね」と言い合って改札をくぐり反対方向の電車に乗った。



 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -