待ちに待った文化祭。初日はいろいろと問題も起きたがなんとか無事に終わり、そして最終日である今日は昨日よりもさらに売り上げを伸ばそうとクラスのみんなで意気込んでいた。

初日はエースとユキの三人で休憩時間にいろんな出しものやお店をまわれて楽しかった。しかし今日は急遽変更になってしまったシフトのせいで二人と時間が合わず、一緒に回れなくなってしまった。ユキにエースと二人きりになるチャンスを作ってあげられたことは嬉しいが、せっかくの最終日を仲の良い二人と一緒にまわれないことは残念だった。私は溜息を吐いたが決まってしまった事はしょうがない。
お昼過ぎに休憩から帰って来たエース達は昨日と同じように楽しそうにはしゃいでいた。


「七花お疲れ!休憩交代だね。本当は今日も一緒にまわりたかったよー!」
「私もだよ!一人ってさみしいけど、…仕方ないね」


肩を落としてユキからの抱擁を受ける。誰かしら友達を見つけて一緒にまわろうと私は二人と交代して教室を出た。そして廊下を少し歩いたところで後ろから肩を叩かれたため振り向くと、知らない他校の男の子が二人立っていた。


「あのさ、もし忙しくなかったら、校内案内してくれたりしない?」
「…えっと……?」
「さっきそこの模擬店でウェイトレスしてたでしょ?あの子可愛いねって二人で話してたんだ。良かったら、一緒にまわらない?なんだったら、友達連れてきてくれてもいいし…」
「あ、あの…」


ナンパだろうか。こういうときは、いつも誘われ慣れているユキが対処してくれていたため、一人だと上手く答えられず、それをどうやら照れていると勘違いされてしまって中々男の子たちは立ち去ってくれなかった。どうやったら諦めてくれるかと途方に暮れていると、聞き慣れた声が私を呼んだ。


「川村?」
「あ、マルコ先生…!」
「……校内でのナンパ行為は禁止だぞ。お前ら、近くの男子高だろ?あそこの教頭とは古い付き合いだから、お前らのこと伝えて…」
「す、すいませんっした!」
「このことは内密にお願いしますっ!」


男の子二人はマルコ先生の言葉にさっと顔を蒼ざめさせて、瞬く間に去っていった。ほっとため息をつくと、私は先生に軽く頭をはたかれた。


「あれくらい軽くあしらえなくてどうするんだ」
「う…す、すいません」
「ったく…世話が焼けるよい」


はたいたところを今度は前髪をくしゃっとするように撫でられる。見上げると、先生と目が合った。なんだか恥ずかしくなって目を逸らそうとしたが、その前に先生は少し眉間にしわをよせて口を開いた。


「それとも、邪魔しない方がよかったか?}
「そんなことないです!助けてくれて、ありがとうございます」
「ん…。まあ、もしお前があいつらとまわりたかったとしても、邪魔してただろうけどな」


独り言のように呟いた最後の言葉に心が揺れる。どうして、こう、自分に都合の良いように考えてしまうのだろう。先生の真意が読めなくて、私は俯いた。
ユキやエースは一緒じゃないのか、と聞かれてシフトがかぶらなかったのだ、と説明する。ふうん、と納得したように相槌を打った先生は、さらに驚くようなことを提案した。


「じゃあ、俺とまわるか?」
「……えっ?」
「俺もあと一時間くらい時間持て余してたんだ、どうだ?」
「い、いいんですか?」


そう聞くと、駄目だったら誘わねぇよい、と笑って答えた。私のその問いかけをイエスだと受け取った先生は、じゃあ行くか、と言って私の数歩前を歩きだした。




 
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