プラトニック | ナノ

香りを深く記憶に沈め



「ユイコさん!」


改札を出たところで名前を呼ばれ振り向くと、そこにはエース君がいた。エース君は、遠くから見てもよく目立つ。走ってこちらに駆け寄ってきた彼は、嬉しそうに鞄から一枚の紙を取り出した。


「どうしたの?」
「これ、見てくれよっ」


渡されたのは、模試の結果だった。それをみると、以前見せてもらったよりも大分良い結果であり、彼の学力が伸びていることが良く分かった。


「すごいじゃん!前よりもかなりあがってるね」
「あぁ!ユイコさんのおかげっすよ!」
「それは謙遜だよ。エース君が頑張ったから、これだけ伸びたんだよ」


あんまりにも嬉しそうにそう言うから、私も少し照れてしまう。それを隠すために、背の高い彼には少し無謀かとも思ったが、私は背伸びをしてエース君の頭をよしよしと撫でて褒めてあげた。その動作に驚いたように目を開き、彼はそして頬を少し染めてそっぽを向いてしまった。


「頭撫でられるの嫌だった?」
「あ、いや…嫌っていうか…」


歯切れの悪い感じからして、もしかしたらあんまり好きじゃないのかもしれないな、と思い手を離した。すると、今度は逆に淋しそうな顔をされてしまい、さっぱり分からなくなった。その場に立っているのも不自然なので、とりあえず歩き出す。エース君は、私に歩調を合わせてくれる。



「……子供扱いされてるみたいで、気に食わない」
「だって、私から見たら子供だよ」
「2つしか違わねぇじゃん」
「高校生と大学生じゃ、全然違いますー」


からかい口調でそういうと、ますます拗ねてそっぽを向いてしまう。相変わらず可愛いなあ、なんて思っていると急に立ち止まってしまう。


「ガキじゃねぇって」
「エース君?」
「背だって、俺の方が高いんだし…」


頬を含まらせてそう言う彼に、私は思わず吹き出してしまう。


「な、俺真面目に言ってるのに…」
「だって、背の高さはガキかどうかと関係ないじゃん…!」
「そりゃあそうかもだけど…」
「エース君、可愛い」
「可愛くねぇよ!」


完全に拗ねてすたすたと歩き出してしまう。そんな様子に私はまた可愛いと言いたくなったが我慢して、早足で彼に追いつく。


「もー、そんなことで拗ねないでよ」
「拗ねてねぇって」
「ご飯奢ってあげるから」
「またガキ扱い…」
「これは模試の結果のご褒美。ガキ扱いとは別だよ。いいでしょ?」


私が覗き込むように言うと、またもや顔を赤面させてエース君はそっぽを向いてしまった。


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