浴槽に身を沈める。冷え切った体がようやく体温を取り戻す。

マルコの言葉を反芻してみた。ようするに、私はいなくなったエースの代わりにマルコを求めているのだと、そう言いたいのだろう。
そんなことはない。私はマルコに触ってほしいのに。
そう思ったけど、だけどそれをあの場ですぐに言葉にすることができなかった。確信を持てなかったから、返事をすることができなかったのだ。
いつだってマルコは優しかった。あの船に乗っているとき、エースとの関係で悩んでいるときも、いつも辛抱強く私の話を聞いて、励ましてくれた。
私は気付いていた。マルコが仲間を思う以上の気持ちを私に抱いていることに。決して言葉にすることも露骨な態度で表すこともしなかったが、マルコは私を大切に思ってくれていた。
そういったことも含めて、マルコの問いかけに対してどこか後ろめたい気持ちが生じてしまったのだ。

私はエースを求めているのだろうか。もういないエースの代わりにマルコに抱かれたいのだろうか。

親父もエースももういない。そばにいるのはマルコだけ。この村に来てからの時間は、マルコだけを見てきた。こうして彼に抱いている感情はただの寂しさなのだろうか。
寂しさだけではない。だけどそれが本当に愛情なのかと聞かれると、答えるのに躊躇ってしまう。
失いたくない人であることは確かだった。それは家族だからという単純な気持ちだけが理由ではないことも分かっていた。
もう二度とあんな思いはしたくない。そして、マルコにもあんな思いをしてほしくない。


長く浸かり過ぎて少しフラフラになりつつもお風呂を出る。
マルコは既に自分の部屋で寝ているようだった。私は彼の部屋にそっと入る。
「一緒に寝たい」と懲りずに言うと、マルコは何も答えなかったがベッドの半分をあけてくれた。

マルコの優しさが苦しい。決して自分から触れようとしないのに、私を拒絶することはない。
無性に腹が立って私はマルコの上に覆いかぶさった。そして少し驚いた様子のマルコの唇に、自分の唇を無理やり重ねた。

「…何すんだ」
「これでも、何も感じないの?抱いてくれないの?」

私は泣いていたと思う。頬を生ぬるい涙が伝っていく感覚がした。
馬鹿みたいだ。こんな、感情を剥き出しでぶつけて。私はいつも自分本位でマルコを傷つける。動かないマルコを見下ろしながら私は後悔して、部屋から出て行こうとマルコの上からどこうとした。
その時、舌打ちが聞こえ、そして私の腕は思いっきり引っ張られた。急なことに驚いて、気が付くと先程とは逆に今度はマルコが上になり私を組み敷いていた。

「マルコ」
「馬鹿にすんのも大概にしろ。………おれがお前に対して何も感じないわけがないだろうが」

そう言ってマルコは私がしたように、いやそれよりももっと乱暴に、強引に、私の唇を奪った。

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