「ん、起きたのか?」


目を覚ますと緑頭が見えた。ここは一体…と考え始めてすぐさま思い出し、体をばっと起こした。


「ミホーク様は!」
「…ミホーク、様?あいつなら多分この城のどこかにいると思うが」
「私ってば話してる最中に倒れてしまったのね、不覚だわ。なんたる失態」


両頬を手でおさえて落ち込む仕草をしたところで何も現状は変わらない。急いで起き上がってプロポーズの返事を再度聞きに行こうとしたが、体が思うように動ない。


「い、痛い……」
「そんだけ怪我してればそりゃ動くと痛むだろ」
「こんな怪我たいしたことないわ」
「あいつは逃げやしねぇんだし、一旦落ち着けよ」


呆れ顔の緑頭に布団に寝かされる。この城に来てから誰からも呆れ顔しかされていない。
そこで扉を誰かが叩く音が聞こえ、ミホークが来たかと思い私はまた勢いよく起き上がりそして体の痛みに顔を歪ませる。入ってきたのは期待通りミホークであり私は嬉しくて彼に声をかけたが見事にスルーされた。


「ゴースト娘にも手伝ってもらったが、近くの海域に海軍の船は一隻もいなかった」
「なまえです、ミホーク様!」
「…様?一体どうやってここまで来たんだ?」
「もう少し先のところで別の海賊を追っていまして、そこでの戦闘のどさくさに紛れて抜け出してきました!辞表も置いてきたのできっと私を探しに来ることはないかと思います」


なので正確には元海軍将校ですね、と言うとまた大きくため息をつかれた。
彼の後ろにはピンク色の頭の女の子がいて食事を運んでくれた。私はお礼を言って受け取ると、私の顔をまじまじと見つめてきた。


「海軍にもこんな変わり者がいるんだな」
「あら、誉め言葉ね、ありがとう。そういえば貴女もどこかで見たことあるような…」
「そんなことよりいつまでここにいるつもりだ?海軍との連絡手段はあるのか?」


目の前の椅子にどかりと座り、面倒くさそうにそう話すミホークは海軍にある資料で見た写真よりもずっとかっこよくて食事が喉に詰まりそうになった。


「いえ、ここに永住するつもりで来たので連絡手段は一切ありませんよ」
「………」
「あ、このご飯すごく美味しいわ。誰が作ったの?あら貴女なの、ありがとう。お名前聞いてもいい?」
「…ペローナだ」
「ペローナちゃんね、私はなまえよ。改めてよろしくね」


握手を求めると複雑そうな顔をして彼女も手を出してくれた。彼女はちらりとミホークの方を見やり、ミホークはやれやれと言った感じで首を振っていた。
緑頭の彼はあくびをしていた。まさか彼がこんなところにいるとは思わなかったが、最早海軍を辞めた私には関係ないことだった。当たり前だが本部に貴方の居場所を報告するつもりもないし連絡手段がないからそもそも出来ないよ、と念のため伝えると、「そうか」と安心した顔をしていた。


「……怪我が治るまでにはどうやって帰るか算段を立てておいてくれ」


ミホークはそう言い残して部屋から出て行ってしまった。

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