「気味が悪い島ね……」


命からがら島に上陸しあたりを見渡すと、景色はまさに「どんより」という言葉がぴったりだった。乗ってきた小舟はほとんど大破していた。もう戻れないが、それで良かった。
島内へと進むと初めて見る猿のような生物に突然襲われた。これ確か調査書にあったヒューマンドリルなのかしら…。手には武器を持っており、タダでは通してくれない雰囲気だった為、仕方なく応戦する。動物相手に本気を出すのもどうかと思ったが案外手強く、元々この島に着いた時点で体力をほとんど消耗していたこともあり、全部を倒すのは諦めて攻撃を受け流しながらその先に見える城を目指すこととした。
城の全貌が見えるくらいの距離に近づいたとき、ヒヒ達はぴたりと攻撃をやめてそこから先追ってくることはなかった。九死に一生を得たような気分だった。せっかくここまでこれたのに、ここで倒れるなんてたまったもんじゃない。

あたりに人がいる気配はなかった。少し緊張しつつも城の中へと入る。
しばらくすると、人の話し声が聞こえた。私は走ってその場へと向かい、扉を開けた。


「ん、誰だお前」
「なっ、その服、何しに来たんだ」


大広間のような場所にいたのは2人だった。緑頭と桃色頭の男女は驚いたように私を見る。緑の方は見覚えがある。まさかこんなところにいるとは思わなかったが…。いるはずのもう一人の人物について聞こうとしたところ、私の真後ろから声が聞こえた。


「珍しい客がいるな」


私はばっと振り返る。声の主は私が捜していた人物だった。


「鷹の目ミホーク……!」
「海軍がわざわざこの島まで来るとは。先日の招聘についてなら必要な仕事はしたつもりだが」
「いえ、今回は私が来たのは個人的な目的であり、海軍本部の令ではありません」


慌てて否定をし、そのまま私は膝を地面につけた。突然のことに驚く様子の彼を前に、私は前から用意していた言葉を緊張しつつも慎重に伝えた。


「事前の連絡もなく突然の訪問申し訳ございません!私、海軍将校、なまえと申します。この度私がここに来たのは……け、結婚を申し込むためでございます!」
「………結婚?」
「決闘の聞き間違いじゃないか?」


後ろから二人の声が聞こえるが、構わずに続ける。人生初の告白に、顔が熱くなる。


「ずっとずっと貴方に会うために海軍に入り頑張ってきて、ようやくこの島にたどり着けました。不束者ではございますが、どうか私をもらってください!」


私の大声は城中に響いたと思う。噛まずに言い切れたことに達成感と、しかしその後誰も何も言わないことに不安を覚え顔を上げると、ミホークは不思議そうな顔をしていた。


「あ、あの、何か反応は……」
「……これほどまでに不可解な海軍は初めて見て言葉を失っていた」
「いやそれほどでも」
「褒めてはいない」


ミホークはため息を吐いて私の横を通り過ぎて行った。慌てて引き留める。返事をまだ聞いていない。


「まだ何かあるのか?」
「お返事を聞いていないです!」
「…丁重に断らせてもらおう」
「な、なんでですか!」
「俺は今誰とも結婚する気はない」
「そんな……」


私は再び膝を地面につける。せっかくここまで来たのに、振られるなんて考えていなかった。私はショックを受け、それまでの疲労が一気に限界に達し、気付いたら意識を失ってしまっていた。


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