13


やがてミホークさんは「そろそろ戻るか」と言い、私はそれに頷いて、浜辺をあとにした。たくさんの恋人達が海を眺めながら、寄り添い、愛を囁いていた。その中を手を繋いで通ることが、なんだか恥ずかしかった。体温が、上がりっぱなしで、苦しい。
街の宿屋に帰るまでの間、私達は一言も話さなかった。着いた宿屋で、私とミホークさんは隣同士の部屋に案内され、部屋に入る前に短いおやすみの挨拶を交わしただけで、特に何も話さず私は部屋へと入った。

こじんまりとした、だけどとても綺麗で気持ちのいい部屋だった。私は靴を脱ぐと着替えもせずにベッドの上に倒れこんだ。


頬を押さえこんで枕に顔を埋める。どうしよう、どうしよう。私、ミホークさんと、………キスを、してしまった。唇同士が触れ合うことを、キスといなら、あれはキス以外の何物でもない。でも、どうして私達がキスをしたのかは分からない。恥ずかしい気持ちで胸が苦しくなる。
ゆっくりと起き上がり、唇をそっと指でなぞった。ミホークさんの体温を、感触を思い出す。前の時と違って、今回のキスには明確な理由がない。それでは、私達が口付けをした理由は、何処にあるのだろう。誰が知っているのだろう。


「ミホークさん…」


彼の行動は謎だらけだ。でも、私の事を大切に想ってくれてるってことは、分かる。少なくとも、嫌いではないことも。でも、だからといって、私を恋愛感情の意味で好きかどうかは、分からない。
考えても答えは出ない。でも、例えミホークさんにとってあれが何の意味を持たないものであったとしても、私にとっては大切な、意味のあるキスだった。あれがほかの人物だったらまた変わっていたかもしれない。だけど、私がキスをしたのは、まぎれもないミホークさんで、ミホークさんは私にとって特別な人だったから…。

私はミホークさんのことを考えながら、いつの間にか眠っていた。隣の部屋にいる彼も、少しは私の事を考えてくれていたらいいな、なんてほんの少しだけ起きていた脳の隅っこで思った。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -