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前を歩くミホークさんを追いかけながら、片手に持った髪飾りをちらりと見た。なんだか、買わせてしまったみたいで申し訳ない。それでも、ミホークさんの厚意が嬉しかった。

歩いていると、どん、といきなり横から人がぶつかってきて、軽くよろけてしまった。転びはしなかったが、その拍子に手から髪飾りが落ちてしまった。足元を見るが近くには落ちていない。少し遠くに飛んでしまったのだろうか。さあっと血の気が引く。せっかく買ってもらったものを早速無くしてしまうなんて。
私は慌てて辺りを見渡して地面を見るために屈みながら探し始めた。踏まれてしまったら、大変だ。なんだか今日はついていない。溜め息をこぼしそうになりながら、私は注意深く地面を見ていた。


「おい」
「……?」


ふと、見慣れた声が聞こえて顔を上げると、思ったよりも近くに顔があって、その近さにドキっとした。


「あ、ミホークさん」


顔をしかめてこちらを見ているミホークさんは、少し不機嫌な気がした。そして髪飾りのことを思い出し、私は再び急いで地面に目を向けたら、今度は名前を呼ばれた。


「なぎさ」
「なんですか………、あ、それ」


差し出された手に乗っていたのは、私が探していた髪飾りだった。どうやらミホークさんが拾ってくれたらしい。落としてしまったことを謝って、受け取るとミホークさんは言った。


「…振り向いたらいなくなっているから、また迷子になっているのかと思った」
「ごめんなさい…」
「急にいなくなるな。…心配する」


ぶっきらぼうな言い方だけど、すごく、なんていうか…。私は頬が熱くなるのを感じた。

ミホークさんは私の手から髪飾りを取り、そして私の髪に触れた。突然の事に、またもや心臓が跳ね上がる。


「あの」
「動くな、じっとしてろ」


時々耳に触れる、少し冷たい指が気持ち良かった。やがて、手が戻り、ミホークさんが触っていた個所に触れると、髪飾りがついていた。
顔を上げると、丁度ミホークさんと目が合った。目をそらそうとすると、彼は少し目を細めて言った。


「似合っている。…花も、その服も」
「……え?」
「行くぞ」


言葉を上手く飲み込めないまま、ミホークさんは歩き出した。歩き出した彼に引っ張られるように足を踏み出して気付く。手が、繋がれている。すごく自然に、ミホークさんは私の手をひいていた。


「ミホークさん、手が」
「またはぐれられたら困るからな。…勝手に離したら許さん」


繋がれた手を緩めようとしたら、そう言われた。ミホークさんの手は少し冷たいから、きっと私の体温が上がっていて熱くなっていることが、すぐ分かってしまうだろう。それが、恥ずかしかった。

街ゆく人が、みんな、手を繋いでいる私達を見ているような気がした。そんなバカなことあるはずないのに。誰かと手を繋ぐという事が、新鮮で、その相手がミホークさんだという事実が、私を暖かい気持ちにさせた。

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