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マルコと街をまわった翌日、生憎の雨で私は船内で掃除やらなんやら雑用を手伝っていた。マルコは昼間は何やら用事があるらしく、夜に一緒に外にご飯を食べに行こうと約束をしていたので、それまでの時間潰しも兼ねて船内をまわって他にやることが無いか探していると、何人かのクルーが集まって話している部屋に遭遇した。


「あ、ヒナじゃねぇか。どうしたこんなところで」
「やることがなくて…」
「じゃあここで一緒にダベろうぜ!」


輪の中心にいたサッチがそう呼んでくれて、私は少し躊躇いつつもその言葉に甘えることにした。昼間だと言うのに既に何人かはお酒を飲んでいて、部屋にはおつまみなども散らばっていて軽い飲み会のような場になっていた。
本当は外に出る予定だったみたいだが、夕方まで降り続く雨のせいで船内に残ってだらだらすることになったらしい。
クルー達は昨日はどこに行っただとか、あそこの店は美味かった等と情報交換をしていた。そのうち、話の流れが怪しい方向へと向かう。


「にしても、ほんとここは美女揃いだな!」
「ああ!おれも昨日の女最高だったよ!顔も体も良し!」
「美女だらけで有名だもんなァ!」


話を聞いていると、どうやらこの島は遊郭や娼館が多くあり、美女揃いと有名な街らしかった。昨日のマルコから聞いた話ではそんな情報は一切出なかったため、私は驚いてしまう。確かに、昨日は夜になる前に船に戻ってしまった。この街は夜になると妖しく活気づくそうだ。


「そういや、昨日ヒナは何してたんだ?」
「私はマルコさんと一緒に出掛けてました」
「夜はどうしたんだ?」
「夜は船でご飯食べましたよ」
「マルコもか?」
「そうだけど…?」


そう答えると、クルー達は「あちゃー!」だとか「かわいそうに…!」だとか一斉に憐みの表情をしだす。訳が分からずにいると、サッチが肩をぽんぽんと叩いてきた。


「よし、ヒナ、今日はおれらと一緒に夜は出掛けようぜ!」
「え、でも、マルコさんと約束が…」
「たまにはあいつも子守から解放してあげねぇと!マルコだって男だから、たまには女が必要だろ」


どうやら、私がいるせいでマルコが女の人で性欲を処理できないのではないか、ということを言いたかったらしかった。私は顔を赤らめて、「やめてよ!」と言うと、「お前にとっては父親かもしれねぇけど、マルコもちゃんとした男なんだぜ!」とサッチに頭を撫でられた。
周りのクルーもうんうんと頷いている。マルコはモテるらしく、船内のナース達とも時折関係を持っていたらしい。この船ではナースに手を出すのは御法度だと思っていたのだが、双方合意の場合は問題がないらしい。サッチ達は「あいつは何故かモテるからな…。自分から行かなくても女が寄ってくるんだよ、憎たらしい奴め!」と悪態をついていた。

みんなは冗談半分に言っていたが、でも確かにマルコは親父さんや他のクルーから頼まれた用事があるとき以外は、ほとんど私についていてくれる。夜だってずっと同じ部屋だし、私が寂しいときは一緒に寝てくれる日もある。彼が他の女の人と過ごす時間なんてほとんど無かった。
もしかしたら、私は彼に相当なストレスを与えていたのかもしれない…。そう考えると胸がきゅっと締め付けられる思いだった。


「せめてヒナにもっと色気があればなぁ」
「一緒の部屋で寝てるんだろ?…まあヒナ相手じゃ勃たねぇか!」


下品なからかいをするクルーを睨むと、「冗談だって!可愛い妹にそんな気起こすはずないさ!ははは」と笑いながら謝ってくれた。だけど、私に色気が無いことは本当だし、彼がそういう意味の欲求がたまっていて、私のせいで発散できていないとしたら、それはとても嫌だなと思った。

結局サッチに言いくるめられたこともあり、私は今日の夜はマルコの誘いを断って、サッチ達と夜遊びをすることにした。
サッチは私についてきてくれて、「今夜はヒナは俺らが預かるから、お前は羽でも伸ばしてこい!」と私の代わりに断りを入れてくれた。マルコは少し不服そうだったが、「お前はそれでいいのか?」と私に聞いて、それに対して「うん」と答えたら、「そうか」とだけ言って了承してくれた。



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