06


サッチとエースと話すようになってから、他の船員からも声をかけられることが増えた。
マルコは時々船を空けることもあり、そんな日は特に、用もないのに呼び止められたり、遊びに誘われたりするようになった。遊びといっても私から見ると喧嘩の真似事のようなものであり、さすがにそれに参加しようという気持ちにはならなかった。私を誘ったクルーもまた本気で誘ったわけではなく、私が遠慮するように断ると笑っていた。

その日一日船にいなかったマルコがようやく帰ってきて、私は彼のもとへと駆け寄った。


「マルコさん!」
「おう、ヒナ。どうした?」


他のクルーとの会話が終わったタイミングだったらしく、彼は私の方へと歩いてきて頭をなでてくれた。
会話できる人は増えたが、やはりマルコと一緒にいるのが一番安心するし落ち着くのだ。


「お前、随分と人気者になったみたいだな」
「え?」
「みんなお前に声かけてるだろい?」


確かに、みんな声をかけてくれるが、ほとんどからかい目的である。悪意は感じられないが、私の反応をみんな楽しんでいるのだ。私が確かにそうだけど…と答えるとマルコは嬉しそうに笑った。


「お前が馴染めてよかったよい」


彼は私の保護者のようである。まるで親のように私を心配して気にかけてくれる。それはありがたいことだけど、なんとなく不服な気持ちもあった。
そのまま二人で食堂に向かい食事をしていると、隣の席にサッチとエースがやってきた。


「お、マルコいたのか」
「良かったなヒナ、親鳥が帰ってきて」
「親鳥って、お前なあ」


サッチにそうからかわれて、マルコも苦い顔をしていた。こうやって周りからマルコが親扱いされるのも、気に食わない。私は頬をふくまらせた。


「私、そんなにマルコさんの後ついてまわってるかなあ」
「そりゃあお前、本当はマルコの隠し子なんじゃないかって噂もあるくらいだぞ」
「そんな年じゃねぇだろ!」
「冗談みてぇなもんだって!」


さすがのマルコも私の父親と言われたのは不服だったようでサッチに言い返していた。
食事の後、マルコと二人で部屋に戻っているときに、私は愚痴を漏らした。


「私が子供っぽいから、ああやってからかわれるのかな…」
「気にすんなよい。若い女が船に乗ってるのが珍しくて、皆お前の気を引きたいだけだ」
「でも、私のせいでマルコさんもからかわれるし」
「おれは別に、お前の親だって言われても、悪い気しねぇよ。年寄扱いは嫌だけどな」


そう言って笑いながらマルコはまた私の頭をぽんぽんと撫でた。私はマルコが親代わりに思われることも気に入らないのに…。もやもやとした気持ちは晴れなかったが、笑いながらそう慰めてくれるマルコに免じて、気持ちを切り替えることにした。

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