05


それから私はマルコと一緒の時はなるべく部屋を出るように努めた。というか、半ば強制的にマルコに部屋の外へ連れ出されていた。部屋を出る度に周りの視線が気になったが、それも外に出る機会が増えるにつれて少しずつ慣れて行った。
また、タダでご飯を食べさせるわけにはいかない、と私は少しずつ雑用も頼まれるようになった。しかしまだ船内を一人で移動することは出来ず、マルコに付いていった先でのお手伝い程度だったが、それでも前に比べたらかなり動くようになり、食事の時間に与えられたもの全てを食べつくすことができるくらいにはなっていた。

ある朝、マルコと共に食堂へ行ったが、彼が他の船員に呼ばれてしまい、私は一人ぽつんとマルコが戻ってくるのを待ちつつ朝食を食べていた。
すると、そこに何度か見かけたことがある船員がやってきて私に話しかけてきた。


「あれ、今日ヒナ一人なのか?マルコは?」
「おれらもここで食うか。一人より三人の方が楽しいだろ」


そう言って二人は私の返事も待たずに目の前の椅子にどかりと座って食べ始めてしまった。


「え、あの、えっと…」
「ああ、ちゃんと挨拶してなかったよな。おれはサッチだ。で、こっちがエース」
「よろしくな、ヒナ」


二人は笑顔で総挨拶をしてくれた。ていうか、「ヒナ」って一体…。私のことをそう呼んでいるのだろうか。


「あの、ヒナって、わたしのこと…?」
「マルコの後ろを雛鳥みたいについて回ってるからな、みんなそう呼んでるぜ」
「名前覚えてないんだろ?とりあえず、思い出すまではヒナでいいんじゃないか?嫌なら別の名前考えるけど」


そう言われて、私は初めて納得した。確かに、マルコと船内を歩いているときに「ヒナ」という単語を何度か聞いた気がする。あれは私のことを指していたのか。
確かに私は雛鳥よろしくマルコの後をついて回っていた。少し不名誉なあだ名のような気もするが、特別嫌なわけでもなかったから首を振ってこたえた。


「嫌じゃない、です。名前、思い出せないし…」
「そっか、ならよかった。ほら、お前も早く食えよ」


エースは、私はご飯を食べるのが遅すぎるのではと言ってきた。確かに、彼の皿はほとんど空になっていた。特別自分の食事のスピードが遅いという自覚はなかったが、確かに周りを見渡すとほとんどの船員がご飯を食べ終わっていた。
私も急いで食べていると、ようやくそこにマルコが戻ってきた。


「一人じゃなかったのか」
「あ、マルコさん」
「一人だったから、おれたちが声かけてやったんだ」
「ヒナは食べるの遅いからな」


マルコは私の皿を見て、そして急いで食べようとしている私を見て笑いかけた。


「んな急いで食べなくたっていいよい。エースも、無意味に急かすな。詰まったら大変だろ」


サッチとエースは二人とも良い人そうであったが、マルコが席に戻ってくれて私は心が落ち着くような感覚を覚えた。そして、彼の笑顔が見れて、心臓がどくんと脈打うつのがきこえた。

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