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マリンが寝ている部屋の隣、クラウドと前に過ごした部屋の扉をあけて中に入る。ベッドにティファと私が腰掛け、バレットは床に、そしてクラウドは窓辺に立った。怪訝な顔で私を見るみんなを前に、どう切り出そうか迷って、口を開いた。

「…みんなに謝りたくて…本当にごめんなさい」
「えっ?えっと…どういうこと?ナマエ」
「プレートが落とされたのは、私のせいなの」

下げた頭があげられない。みんなの顔を見るのが、怖かった。

「あぁ?そりゃどういうことだよ!」
「バレット!…まずは説明してくれ、ナマエ」
「…タークスに言われたの。私の居場所や大事なモノを奪うためだって……。そうしたら、私の方から神羅に戻ってくるだろうから、って」
「待って!神羅に戻るって、ナマエは一体…」

困惑した表情のティファに、無理もないと思ってしまう。ここまで、何も話してこなかったのは私の意思で、急にこんな話をしたらみんなを混乱させるのはわかっていた。

「神羅と、私の関係。長くなるかもしれないけど、聞いてくれる?」

おずおずと話を切り出した私に、みんなが頷いてくれて少しほっとする。
それから私は、話せる限りのすべてを打ち明けた。
両親を幼い頃に亡くしプレートの上の孤児院に引き取られたところ、運悪く宝条に目を付けられて、7年余り宝条の被検体とされたこと。詳しいことは自分もよく分からないけれど、従順な兵士を作るために宝条が独自に精製した細胞を身体に埋め込まれ、魔晄を照射されたため、身体能力はソルジャーに近いものがあること。今から6年前、施設から脱走を図った際に、ある人に助けられて七番街スラムに身を隠したこと。
嫌な記憶ばかりということもあって上手く説明ができなくて、何度か言葉を飲み込んだりしながら、なんとかそこまで話し終える。恐る恐るみんなの顔を窺うと、誰もが視線を下に落として複雑そうな表情だった。

「…宝条が、何故か今更私を連れ戻すようにタークスに指示をしたらしくて、それでタークスに追われてる。…だから今回のプレートのことは──」
「お前はなんにも悪くねぇじゃねぇか!」

突然私の言葉を遮るように大声を出したバレットに、驚いて黙る。

「捕まえられて変な実験させられただと?ならナマエはただの被害者だろ!お前のせいなんかじゃねえ!!」
「っ…バレット……」

バレットはまるで自分のことのように、凄い剣幕で怒っていて。思わず鼻の奥がつんとして、目頭が熱くなって俯いた。膝の上でぎゅっと握りしめた拳の上に、ぽとりと一粒雫が落ちる。

「ナマエ、バレットの言うとおりだよ。ナマエは何も悪くない、大丈夫。……怖かったね」

そう言って、ティファは私の肩に手を置いて自分のほうへ引き寄せ、ぎゅっと抱き締めてくれた。堪えていた涙が溢れて、ティファにしがみつくように嗚咽を漏らす。
ずっと、欲しかった言葉だった。怖かったんだ。ひとりで抱えるには重すぎる過去も、話したら本当にひとりになってしまうんじゃないかという不安も。

「だまってて、ごめんなさい…っ!こわかった、…みんなが、離れていっちゃうんじゃないかって…ずっと、ずっとこわかった……っ」

嗚咽混じりに紡いだ言葉はちゃんと届いていたようで、ティファが頷きながらぽんぽんと優しく背中を叩いてくれる。

「バカ野郎!お前が言ったんじゃねえか、家族だってよ…。俺たちはそんなことじゃ離れていかねぇ。ナマエも、ティファも、…あー、まあクラウドもだ!もうみんな家族みてえなもんだろうが」
「っうん…、ありがとう……みんな」
「ナマエ…。俺たちは、あんたを神羅には絶対に渡さない」

クラウドの真剣な言葉に、涙でぐちゃぐちゃになってるであろう顔を上げる。翠玉の瞳が、その言葉が偽りなんかじゃないことを物語っていて、また涙が零れる。
この人たちと出会えて、私はなんて幸せ者なんだろうと思う。泣き顔のまま、少しだけ笑って頷いて、それを見たみんなも眉を下げて微笑んだ──。
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