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着飾った別人のようなナマエを見た時から、ずっと嫌な予感が頭から離れなかった。コルネオに案の定ナマエが指名されて、だから止めたんだと、腹の底が黒いものでいっぱいになる。俺はナマエが連れていかれたコルネオの部屋に急いでいた。
あいつが選ばれたあと、俺たち3人は別室へと誘導され、そこでは複数のコルネオの手下が下品な笑みを浮かべていた。エアリスとティファがそれの処理を買って出てくれたこと、ナマエを助けるように促されたこともあって、俺は飛び出すようにそこを後にした。途中レズリーが剣と服を返してくれたのが幸運だった。
ナマエは、強い。コルネオを相手にしても心配はいらないくらいに。でも、何なんだ、この嫌な感じは。どうか無事でいてくれと祈るような気持ちで、元いたコルネオの部屋へ入り、奥へと続く扉を蹴破った。

「ナマエ!──っ!」

飛び込んできた光景に、頭の中が真っ白になった。ベッドに乗ったコルネオの下から、無防備な白く細い足が見える。その横にはナマエが身に付けていた帯が無造作に放られている。それを見た瞬間、沸騰した血が頭に上り、身体が勝手に動いた。ナマエに跨るコルネオの巨体を蹴飛ばし、ベッドに押し付け、身動きが取れないように跨って、引き抜いたバスターソードの刃をコルネオの首に宛てがった。

「ひいぃっ!!」
「っクラウド…待って…」

恐怖に怯えた情けない悲鳴を上げ、コルネオの顔から血の気が引いていく。隣で未だ力なく横たわるナマエがか細い声で何かを言っているが、血が滾っているのと反して妙に冷めた頭には何も届かない。ぐ、と右手に力を入れ、コルネオの首に刃を食い込ませようとした瞬間。

「クラウド!っだめ!!」
「ナマエ!」

ばたばたと忙しない足音と声が聞こえ、ティファが俺の右腕に抱き着くように制止した。エアリスはナマエへ駆け寄り、乱れた着衣を素早く直してやりながら肩を抱き起こしている。それを横目で見て、さらに頭に血が登る。ナマエに、一体何をした…?その汚い手で、ナマエに触れたのか?

「ティファ、止めるな」
「だめ!殺さないで…!まだ、話を聞いてない!」
「ひぃっ、やめてくれ…やめてくれぇ……」
「……」

かなりの力で抑えられているようで右腕は動かない。確かにティファの言う通り、コルネオの目論見を聞くのがそもそもの目的で、殺してしまっては意味がない。ただ、それでも俺はこの男を──。

「クラウド」
「…ナマエ」
「クラウド、私は大丈夫。だから、その手を汚さないで」

先ほどよりもしっかりとしたナマエの声が聞こえ、振り向く。相当怖かったんだろう、少し震えている身体で、俺を安心させるように微笑んだナマエに、胸が締め付けられる。なんであんたは、笑ってられるんだ。

「……わかった、殺しはしない。だが話は聞かせてもらう」
「っひぃ!わかりました、わかりましたから命だけはっ!」

コルネオの首元からバスターソードを離し、背に抱え直す。ほっと安心したように、右腕に抱き着いていたティファも身体を離した。くそ、本当はすぐにでもこの下衆な男の首を切り落としてやりたい。ただそれじゃここまで来たのが全て水の泡になるのもわかっている。俺が、もっと早く来ていればナマエは──。
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