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「ナマエ様、お客様がお待ちでーす!こちらへどうぞ〜」

何故かハニーガールがそう言って、私の腕を引いて立ち上がった。

「え?なに?」
「ナマエ、どうしたの?」
「わ、わかんない」
「さぁさぁ、こちらですぅ〜」

そのまま私の腕を引いて歩き出してしまって、されるがままに着いていく。エアリスが怪訝な表情をしてたけど、私のほうが訳がわからなくて混乱してる。どこに行くのかと思ったら、会場まで出てしまって、立ち止まったのはプレイルームと書かれた扉の前。え、どういうこと?

「ナマエ様、こちらでお客様がお待ちです〜!どうぞお入りくださーい」

そう言って扉を開いて、半ば押し込まれるようにその部屋に入ったら扉が閉められた。訳が分からないまま顔を上げて目に入ったのは。

「──タークス…」
「ごきげんよう」
「ナマエ、見違えたな」

薄暗い部屋の中央には、椅子に足を組んで腰掛けるツォン。その右で出窓の縁に両足を乗せて座るレノと、ツォンの左側の壁に腕を組んで寄りかかるルード。何でここにタークスが集まってるのか、何で私が呼ばれたのか。全く理解出来ないけれど、自分の眉間に深く皺が寄るのがわかった。

「へぇ、随分似合ってんじゃねぇか、と。…えっろ」

ニヤニヤと口角を上げてそう言ったレノを睨む。視線を受けて一層愉しそうに顔を歪めたレノを無視して、私は中央に鎮座するツォンに向かい合った。

「なんの用?全員お揃いで」
「そう警戒するな。お前を捕らえに来た訳ではない。仕事だ」
「…仕事?」
「コルネオの周囲を探っている怪しい奴らがいるとの報告が入った。まさか、ナマエ。お前じゃないだろうな」
「さぁ、なんのこと?」
「…まあいい」

コルネオ、とツォンは言った。コルネオは、タークスと、いや神羅と繋がっている?でも万が一そうだとしても、タークスが勢揃いで収拾に当たる必要があるんだろうか。例えば、タークスや神羅にとって、知られたら不味い事があるとしたら。何か、裏で大きい計画でも動いている…?

「ねぇ、神羅は何を企んでるの?」
「ふはっ、俺ら随分警戒されてんだな、と」
「壁の内側では大抵のことに目を瞑るこのウォールマーケットで、タークスが動いてるって…普通じゃないと思うけど?」
「相変わらず頭はキレるようだな。だが、お前に答えてやる義理はない」
「…はぁ、だと思った。ツォン、本当に変わったね」
「何も変わりなどしていない。お前が甘いだけだ」
「主任、これだけは言っといてもいいんじゃねーの?…ナマエ、おまえも無関係じゃねぇぞ、と」
「……どういうこと?」

レノが発した言葉に首を傾げる。私も無関係じゃない?何の話?まったく読めない話に、ただ嫌な予感だけが残る。

「ナマエ、次は…お前を必ず連れ戻す。どんな手を使ってもな」

淡々と、無表情のままツォンはそう言った。言ったはずだ。何をされようと、どんな手を使ってこようと、私は神羅には戻らない。もう何度目かになるその返事は、面倒だから口には出さなかった。

「どうぞ、お手柔らかに」

お返しに、マムから教わった男を落とすための仕草。首を少し傾けて、柔らかく微笑んでみせる。

「ははっ…ほんとエロいわ、それ」

ツォンとルードは何も言わずに少し眉を動かした程度だった。レノに関しては、イカレたことを言ってたけど。そろそろショーが終わってしまっている頃だ、こんなところで油を売ってる暇はない。

「それじゃ、もうしばらく会いたくないから。タークスはお腹いっぱい」

古風だけど、べっ、と舌を出してそう吐き捨てて、私は返事も聞かずにその部屋を出た。特に追いかけてくる様子もなく、ほっと安堵の溜息を漏らした。もう本当に、しばらくはタークスの顔もみたくない。丁度ショーが終わったみたいで、会場からエアリスが出てきたところに駆け寄る。
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