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「なに騒いでやがる。…なんだ、見ねぇ顔だな」
「髭のおじさん、そのチョコボ車に乗っけてた女の子、知らない?」
「髭…?探してどうする」
「もちろん助け──」

直球で応えようとしたクラウドの肩をちょっと強めに叩く。ちょっと睨まないでよ、馬鹿正直に話したら揉めるだけなんだから、なんて心の中で思う。

「この人、その娘がタイプなんだって。だから」
「な、エアリスっ…!」
「兄ちゃんも物好きだね。といっても…結構連れてきたからな。どの娘だ、特徴は?」
「……スタイルが、いい」
「それと、物凄く美人」

クラウドがボソリと呟いた特徴に、私も付け加える。というか、ふーん。やっぱりクラウドもティファのダイナマイトボディが気になってるんだ、ふーん。エアリスが横で、スタイルかぁ、なんて呟きながら自分の身体を見下ろしてる気持ちが、うん、わかるよ…。あ、決して全く無いわけじゃないよ!ただちょっと足りないっていうか、ね。…なんか虚しくなってきたな。

「もしかして、ティファちゃんか?」
「そうだ」
「兄ちゃんも撃ち抜かれちまった口か…。でも残念だったな。あの娘は当分出てこれねぇよ」
「え、それどういうこと?」
「あの娘は特別よ。コルネオさんの屋敷に入って、嫁を選ぶオーディションを受けることになってる」
「…うそ」

嫌な予感が的中してしまった。コルネオの嫁なんかに選ばれでもしたら、本当に何されるか分かったもんじゃない。ティファが、危ない。

「ティファちゃんはコルネオさんの好みにドンピシャ。長年代理人をやってきた俺が言うんだから間違いないね。…だから、当分は屋敷から出られないってわけだ。もしかしたら一生出られないかもな」
「ドン・コルネオの居場所を知らないか」
「おい、なんだ?やっぱり面倒を起こそうってハラか。起こすなら勝手にやってくれ!俺を巻き込むな、帰れ帰れ」

追い払うような仕草をして、髭のおじさんはそのまま出てきた建物に入っていってしまった。

「あーあ、行っちゃった。とにかく、街の中、探してみよ」
「うん、急がないとやばいかも」
「ああ」

手当り次第見て回るしか、今は方法が無さそうだ。意を決して、私たちはウォールマーケットに足を踏み入れた。

「うわ…想像以上」
「ん?」
「いかにもな雰囲気だなーって」

街の中は本当に同じスラムかと疑いたくなるほど、妖艶な雰囲気だった。ネオンが眩しいし、客引きの数も多い。それに、なんだかジロジロと嫌な視線を感じて居心地悪い。

「ナマエ、離れるなよ」
「ん?うん、ありがと」
「わ、クラウドかっこいい〜」
「…あんたもだ、エアリス」

クラウドがちらりと私を見てそう言う。エアリスが入れた茶々に、気まずそうに視線を逸らすクラウドに首を傾げる。どっちかっていうと、私はエアリスの方が心配だけどね。悪い人にも優しくしちゃいそうで。

「エアリス、だめだよ?」
「うん?なんのこと?」
「知らない人に、着いてっちゃ」
「ふふ、なんだかナマエのほうが、おねーさん、みたいだね」

楽しそうに笑うエアリスに、つられて私も笑顔になる。私の方が全然年下のはずなんだけど、なんて満更でもなかったりして。

「…ん?ねぇ、あれって…」

蜜蜂の館と書かれた大きなネオン看板の下、佇む見覚えのある後ろ姿に、横に立つクラウドをちょんちょんとつつく。

「…誰だ」
「覚えてないの?七番街の、ジョニー」
「……ああ」

今の間、完全に忘れてたね。強烈なキャラなのに、とちょっと不憫に思いつつ、私はジョニーに近付いた。

「ジョニー?」
「ん?……ナマエ!?なんでここに!まさか…愛しの俺を追いかけて…?」
「あーはいはいそうそう。で、ティファを見てない?」
「ティファ!ティファがここにいるのか!?なんで?なんでよ!?もしかして、ティファまで俺を追っかけて…?」
「はは……」

相変わらずマシンガントークが過ぎるよジョニー。息付く間もなく捲し立てるジョニーに、エアリスなんかぽかんと口を開けたまま思考停止してる。でもこの反応だとティファは見てないんだろうな。じゃあもう用はない、と別れを告げようとしたら突然強く握られた右手。

「こうしちゃいられない!ナマエ!」
「へ?」
「あんたが俺を想う気持ちは嬉しいぜ…。あんたみたいな別嬪サンに愛されて悪い気はしねぇ。だがな!俺にはティファだけなんだ!すまねぇがナマエの気持ちには答えてやれねぇ!いや、答えちゃいけねぇんだ!待ってろよ、ティファああ!!」

いやまじで何を言ってるの?私までポカンとしちゃったじゃん。ジョニーもういないし。そんなことより。

「…なんで私がフラれたみたいになってるんだと思う?」
「…さあな」
「どんまい、ナマエ」

憐れみを存分に含んだふたりの反応に、私は乾いた笑いと一緒に大きな溜息を吐き出した。
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