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「仕方ない、駅は包囲されているはずだ。飛び降りよう」
「マジか!」
「え、本気?」

クラウドの言葉に目を見開く。この、かなりのスピードで走ってる列車から?さすがに無傷じゃ済まないと思うけど、と一瞬考えて、ただそれ以外方法がないのも確かだった。

「速度を落とせばいい」
「そりゃビックスの"プランE"だな」

そう言うや否や、バレットが車両のドアに向かってガトリングガンを撃ち込む。弾が当たった衝撃でドアは外れ、線路に大きな音を立てて落下していった。それと同時にティファが非常停止ボタンを押すと、ブレーキがかかり急激に速度が落ちる。

「じゃあ先に……行くぜ、」
「待てバレット。ティファを頼む」
「あぁ?ったくしょうがねぇな!ティファ、行けるか!」
「う、うん!」

いざこれから飛び降りようとしているバレットをクラウドが制して、ティファを連れていくように指示する。

「よっしゃ、行くぜ!」

そう言ってティファを抱きかかえ、バレットは外へ飛び出していった。私もすぐにそれに続こうとして、ぐい、と突然引っ張られる腕。

「…ん?」
「こういうのは平気なのか」
「え?…あ、もしかして昨日のこと?」

私の腕を掴んだまま、そう訊いてくるクラウドに一瞬首をかしげて、あぁ、と納得する。高いところが苦手なだけであって、こういうのは別に大丈夫。全く怖くない訳じゃないけど、あれとは別。クラウドに首を振って、もう一度ドアの前に立つ。

「大丈夫、ほら行こ」
「…掴まってろ」
「えっ」

私の横に立ったクラウドが、そう言って私の肩をぐっと自分の方に引き寄せて、次の瞬間電車から飛び出した。強い衝撃を覚悟したけれど、クラウドが庇うように強く抱き締めてくれたおかげで、線路を大分転がった気がしたけど身体はほとんど痛くない。

「平気か」
「ん、…っわ!?」

耳元でクラウドの声が聞こえて、閉じていた目を開ける。すぐ眼の前にあったクラウドの顔に驚いて、私の下になっていたクラウドの上から飛び起きる。びっくりした、息がかかるくらい近かった。なんて混乱している暇もなく、すぐに後方から聞こえてくる、警備ドローンの機械音。

「ナマエ、行けるか」
「へーき!それに、早くティファ達に合流しないと」

ダガーを抜いて構えながら、クラウドに笑ってみせて、私達は走り出した。

敵を蹴散らしながらしばらく線路沿いを走っていると、反対の線路の奥からバレットとティファの声が聞こえてきた。クラウドと顔を見合わせて、足を早める。

「向こう側だな。階段を使うぞ」
「うん、りょーかい」

クラウドが階段を登り始めて、それに続こうと階段に足を掛けた時だった。

「っん───!?」

油断していたわけじゃない。でも、全くと言っていいほど気配に気付けなかった。背後から突然伸びてきた誰かの手で口を塞がれ、咄嗟にクラウドを呼ぼうとした声は掌に吸い込まれる。暴れようにも私の両腕は一纏めにそいつの片腕で掴まれ、身動きが取れない。クラウドがそんな私に気付くことはなかった。階段を登りきって走り去っていく背中を見つめることしかできない。そのままかなりの力で引っ張られ、線路の途中にある脱出用らしい細い通路に身体を押し込まれた。
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