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駅に着くと、もう既に電車は来ていた。どうやら私が一番遅かったようで慌てて電車に飛び乗る。
後ろのポケットには、ザックスとの写真。セブンスヘブンを出た後に部屋に寄った時、何故か持って行くべきだと咄嗟に思って写真立てから抜いてきたものだ。そのおかげで危なく置いていかれるところだったけど。
「特別警戒態勢、ね…」
「どおりで人が少ないわけだ」
電車内ではしきりにアナウンスが流れていて、クラウドが言う通り乗客もほんの数人しかいない。
「爆破予告のこと、ビックスの予想より早く広まってる」
「固まってると目立つか?」
バレットの言葉にみんな頷く。違う車両に移ると出ていったバレットを私は追いかけようとして、壁に凭れ掛かるクラウドが目に入った。
「クラウド、ティファのことお願い」
「…ああ」
すれ違いざま、ティファには聞こえないくらいの声でクラウドに話しかける。ティファが思い詰めたような表情をしてたのが気にかかって、そしてそれはクラウドも気付いていたらしく安心する。静かに頷いたクラウドに微笑みかけて、先頭車両に続く扉をくぐった。
「バレット」
「…おう、ナマエか」
「固いなぁ、緊張してる?」
「はっ、誰が。俺は早く暴れたくてウズウズしてんだ」
2人分くらいの座席を悠々と使って座るバレットの横に私も腰掛ける。ピリピリしちゃうのはわからなくもないけど、もう少し肩の力抜いたらいいのに。
「ねぇ、こうしてたら周りから親子に見えるかな」
「あぁん?俺にこんなデカい娘はいねぇ!」
「ひどい、お父さん…」
「誰が父さんだ、俺はまだ35だ!」
「あはは、冗談だって」
「ティファが気にしてたから来てみたが、無用だったな」
突然聞こえてきた声にそちらを見ると、そこにいたのは呆れ顔のクラウドで。ふざけてたと思われてる?まぁちょっと当たりだけど。
「クラウド、そっちの様子は?」
「変わりない」
「それならティファのそばにいてやれ」
「…ああ」
後ろの車両に戻っていくクラウドを見て、思う。クラウドって、特別ティファに優しい気がする。比べて私に対する態度はお世辞にも優しいとは言えないし、むしろバカにされてるというか揶揄われてるというか。思い出してちょっと腹が立ってきた。同郷の友人って言ってたけど、ほんとのところどうなんだろう。まぁ、他人の色恋沙汰とか面倒だから首突っ込みたくないけど。なんてひとり考えていた時に、突然のアナウンスと共に走る赤い光。
『臨時ID スキャニング中です』
「バレット!どういうこと?IDスキャン、さっきもあったよね?」
「っなんだぁ?」
『非常警戒態勢を発動 手配IDの疑いあり』
「あれ、これまずくない…?」
「くそ!どうなってやがる!とにかくあいつらを呼ばねぇと!」
バレットの声に頷いて、クラウドたちが乗る後ろの車両へ走る。
「お前ら!早く来い!」
バレットが叫んだと同時に、車両奥の窓ガラスが突き破られ警備ドローンが数機入ってきた。乗客は悲鳴を上げて、先頭車両に雪崩込んでくる。
「嘘でしょ?一般客も乗ってるんだよ!?」
「とにかく先頭車両に急がないと!」
ティファが乗客の誘導を買ってでてくれて、とにかく車両隔離が終わるまでに片付けないとと、私はドローンと交戦中のクラウドの元に走る。
「クラウド、手伝う」
「あぁ、頼む」
狭い車内だとなかなかに動きにくい。でも隔離されたら終わりだ。それまでに車両を移動しないと、とダガーを振る。幸い数体のドローンにはそこまで手こずらずにすんで、クラウドと前方車両に駆け込んだ。
「あーもう面倒臭い!」
次の車両にもドローンがいて、サンダーを打ちながら駆け抜ける。
「ほら、急いで!早く逃げて!」
「どういうつもりだ!」
「そこならきっと安全だから」
「あたしは神羅社員だ、敵だろ?」
「敵じゃない!みんなを守りたいの、お願い…」
「……こっちは、あたしが面倒をみる」
ティファと神羅の社員が言い争う声が聞こえたけれど、なんとか穏便に事はすんだようで一息つく。乗客の避難も無事終えたようだ。
「ティファ、バレット!」
「キリがないな」
やっとティファたちに合流できたと思ったら、次々と窓から飛び込んでくる増援のドローン。ほんとにキリがない、これじゃ私達袋の鼠だ。