26
ジェシーから指示があった広場へ向かう途中、ビックスからジェシーの家族の話を聞いた。長いこと付き合いはあったけど、初めて訊く内容に心が痛む。でも、どこか冷めている自分もいて。だって、生きてさえいてくれるなら、会えるから。そんなひねくれた感情に嫌気がさして、振り払うように頭を振った。

「魔晄の中には、色んな願いや想いが流れてる。てめぇの都合で好き勝手に利用していいもんじゃねぇんだ、きっと」
「…それは同感」

神妙な面持ちで発せられたビックスの言葉に素直に頷く。アバランチの過激な思想とか、正直それに同調するつもりはないけれど。それでも、神羅を嫌うのは同じだから。

「…あっ!話したってこと、ジェシーには内緒だぞ?あいつ、怒ると手がつけらんねぇんだから」
「それは…どうだろう」
「あはは!ウェッジ、首が取れちゃうかもね」
「こ、怖いっス!」
「興味ないね」
「こいつ…!」

クラウド意外とノリいいんだ、なんて思いながらみんなで笑い合う。うん、やっぱりしんみりした空気より、私はこっちの方が好きだ。
空き地を過ぎ、広場に続く通路を通りながら首を傾げる。なーんか、妙に…。

「静かっスね…」
「待て。…警備が一人もいない」
「ほんとだ、変だね」

警備室のような小さい建物の中から、明かりが漏れているのに誰も見当たらない。近づいて中を覗いて、一瞬息を呑んだ。警備兵が、死んでる。

「…野蛮な先客がいるみたい」
「ジェシーじゃないっスよね、これ…」
「厄介なことになってなきゃいいが…」
「急ごう」

顔を見合わせて頷き、駆け出す。広場までもうすぐ、というところで空に照明弾が光った。よかった、無事に潜入できたみたい。

「行くぞ、ナマエ」
「はぁい。フォローよろしくね、ビックス、ウェッジ」
「任せろ!」

ビックスとウェッジが高台に向かうのを横目に、クラウドと広場正面に向かって走る。バイクの上じゃ思ったように戦えなくてストレス、溜まってたんだよね。

「なんで嬉しそうなんだ」
「え?ストレス発散」

変なものでも見るかのように訝しげな視線を寄越すクラウドに、失礼だなぁなんて思いながらそう返してダガーを両手に構えた。

「わかってると思うが──」
「無茶はするな、でしょ?」
「…はぁ。」

わかってる。信頼してるから、クラウドのこと。口には出さずに心の中で呟く。私が背中を預けられる人、そう多くないんだからね。
広場に堂々と駆け込んで、奇襲のようにざわめく神羅兵を倒す。バスターソードを軽々と振り回して戦うクラウドは、やっぱり悔しいくらい格好良い。なんだろう、これ。一緒に戦うの、楽しいかもしれない。

「ふふっ」
「おい、集中しろ」
「わかってる、よっ!でも、楽しい」
「っく、…なにが」
「クラウドと戦うの。すごく動きやすい」
「……否定はしない」
「あ、デレた」
「調子にのるな」

お互い背中合わせで、目の前の兵士を蹴散らしながらする会話。気遣いも、遠慮もいらないのに、自然と合う息。それがこんなに嬉しいことだなんて、初めて知った。
ビックスとウェッジの援護射撃もあって、粗方片付いたかと思った時、倉庫のシャッターが開き中から出てきたのは神羅の機械兵器。

「はぁ、普通あんなのまで出してくる?」
「普通じゃないからな。行けるか」
「うん、いい準備運動になった」

クラウドと目を見合わせて頷く。私はサンダガを放ち、怯んだ隙にクラウドが重い斬撃を叩き込む。流石に生身の人間と違ってそう簡単に倒れてはくれなかったけれど、ウェッジが見つけた地雷型爆弾のおかげもあってそこまで苦戦せずになんとかなった。機械、ダガーと相性悪くてやなんだよね、と心の中で呟いて、ふぅ、と息を吐き出した。

「包囲しろ!」
「えぇ…まだ来るの?」

再びぞろぞろと現れる兵士が、私達を取り囲む。しかも、さっきより人数増えてる気がする。さすがに面倒かも、と思った時に遠くから聞こえてくる、聞き覚えのある嫌な音。それはどんどん広場に近づいてきて、そして見えた姿に、今までで一番大きな溜息が出た。

「ハデにやってるじゃないか!マーイフレンド!」

ちょっと巻き舌気味なのが腹立つ。もう嫌だ。今度会ったら殴ってやると思ってたけど、流石にこんな早く再会したくなかった。
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