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「それで、どこに行くんだ」
「仕事といえば、ワイマーさんのところかな」
「誰だ」
「自警団に来る依頼をまとめてる人。なんでも屋の仕事もあるかもね」
横で頷いたクラウドに、あれ、と思って顔を見る。視線に気が付いたのか、クラウドも怪訝な表情をする。
「…なんだ」
「もう言わないのかなって」
「ん?」
「ついてくる気か?って」
「……あぁ。やりやすかったからな」
………変。今日のクラウド、妙に素直すぎない?さっきも普通に謝ったりとか、お礼も言われたし。
「もしかして熱でもある?」
「は?…っ!?」
おもむろに手を伸ばしてクラウドの額に触れる。…うん、熱はないかな。一安心して、手を離してそこにあったのは、目を見開いてても端正な顔と、ほんの少しの頬の赤さ。
「…クラウド、顔赤いよ」
「っ、気のせいだ」
「ふーん」
別に揶揄ったつもりじゃなかったんだけど、と内心苦笑しながら、いつもの仏頂面で歩き始めたクラウドを追いかける。
結局、ワイマーさんに腕を買われてなんでも屋の依頼をどんどんこなした私達がセブンスヘブンに戻ったのは、陽が傾き始めた頃だった。依頼の殆どがモンスター討伐だったけど、猫探しの依頼が来た時は流石にクラウドと顔を見合わせた。疲れたけど、私もなんだかんだ楽しかったから、手伝って良かったとは思う。
「…なんだろ」
「妙にざわついてるな」
セブンスヘブンに入ろうとした時、広場の一角に人だかりが出来ているのが見えて首を傾げる。あそこ、もしかしてジョニーの家の前…?
「よせ、くんな!」
そんな切羽詰まった声と同時に家から飛び出してきたのは、案の定ジョニーだった。慌てて階段を踏み外して、その場に蹲るジョニーと、それに続いて出てきたのは。
「っ…神羅……」
追いかけてきた神羅兵は、ジョニーに手際よく目隠しをして後ろ手を縄で縛り上げた。悪いヤツではないけれど、七番街で起こる揉め事と騒ぎは大体がジョニー絡みだから納得もするけれど。悪態をつきながら連行されていくジョニーを、周囲も遠巻きに見ている。
「クラウド、このタイミングで神羅が出てくるってことは…」
「ああ、恐らく魔晄炉関係だろうな」
「はぁ…。私、ちょっと行ってくるね」
「アバランチなのか」
「ううん、無関係。でも、ジョニーは多分アバランチのこと勘づいてる」
そこまで言うと、勘のいいクラウドは私が言わんとしていることに気付いたようで。
「…目的は口止め、か」
「正解。クラウドは先にセブンスヘブン戻ってて」
「俺も行く」
「え?」
「今日は世話になったからな。礼だ」
「気にしなくていいのに。でも、うん、ありがとう」
まさかクラウドが着いてきてくれるとは思ってもみなかったけれど、正直あまり神羅と近づきたくなかった私には有難い申し出だったから、クラウドに甘えることにした。