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「着いたよ、ガレキ通り」
「いかにもモンスターが好みそうな場所だな」
「うん。自警団が封鎖してるから、普通の人たちは入れないようになってるけど、たまーに居住区までモンスターが入って来ちゃうことあるんだ」
「さっさと片付けよう」

その名の通り瓦礫とゴミで溢れる中を、クラウドと慎重に進む。

「クラウド、あれ」
「ああ。ナマエ、行けるか」
「うん、余裕」

さっそく見えたモンスターの群れ。ダガーを両腰から抜きながら、そう当たり前のことを訊くクラウドに笑ってみせる。あーあ、これはビックスの悪い癖のほうだったかな、なんて思いながら。
クラウドはバスターソードを敵に重く叩き付け、私は敵の背後から素早くダガーで斬り付ける。断末魔と一緒に、モンスターの群れはものの数秒で消えてしまった。へぇ…思った以上に、クラウド強いんだ。しかも、ちゃんと私が動きやすいように立ち回ってくれてた気がする。

「すごいね、クラウド」
「あんたもな」
「珍しい、クラウドに褒められた」
「はぁ、調子に乗るな。まだモンスターの気配はある、先に進むぞ」
「…はいはーい」

それからガレキ通りを一周して、残っていたモンスターもすぐに粗方片付いた。やっぱり、びっくりするほど息が合うというか、とにかくクラウドとはやりやすい。…まぁ、戦闘だけだけど。

「うん、これでしばらくは大丈夫でしょ」
「ナマエ」
「うん?」

ビックスのところに戻ろうかと来た道を引き返していると、突然クラウドに名前を呼ばれて立ち止まる。綺麗な翠玉の瞳を見上げて、首を傾げた。

「左腕、庇ってただろ」
「え?」

左腕?あぁ…。意外とよく見てるんだ、なんて驚く。でも、これ半分あなたのせいですけど。わかりにくいけど、とりあえず心配してくれてるみたいだから小言を言うのはやめておく。

「痛むのか」
「痛いけど平気。これくらいすぐ治るから」
「…悪かったな」

聴こえてきた言葉に、思わず目を見開く。この人、今、謝った?あまりにも唐突すぎて、口をあんぐりと開けたまま思考停止してしまう。

「…だ、いじょうぶだけど」
「その顔やめろ」

はぁ、と溜息をついて変なものでも見るかのような冷たい視線を寄越すと、クラウドはそのまま歩き始めてしまう。その背中を見て、やっぱり悪い人じゃないんだと改めて思う。忘れていたはずの左腕が、また少しズキズキと痛むのを感じながら私はクラウドの背中を追いかけた。
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