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それからは、本当に目まぐるしかった。
宙に浮いた瓦礫を飛び移りながら、バラバラになってしまったみんなを探して、クラウドに会って安心して。襲いかかるフィーラーと、それから規格外のサイズのフィーラーが集まって生まれた運命の番人。みんなと無事合流ができて、それを倒すことに集中して。
でも、運命の番人に傷をつける度に流れ込む、見たこともない情景。レッドやエアリス曰く、それが捨てようとしている未来だと言われて、本当に運命が変わろうとしているんだとどこか怖くもなった。

「大丈夫だ、ナマエ。何があっても、俺が傍にいる」
「クラウド…うん、私もだよ」

不安な気持ちが顔に出てしまっていたのか、クラウドが真剣な顔で私を見つめて紡いだ言葉に、大きく頷いた。
残っていた気力を全てバングルに注ぎ込んで、私は運命の番人に魔法を放つ。その場にいた全員が最後の力で攻撃して、運命の番人は消え、空から光が降り注いだ。

「セフィロス…!」

光に照らされた、冷酷な笑みを浮かべるセフィロスに気付いたクラウドが飛び出していって。

「───クラウド!」

名前を叫んで伸ばした手は、空を切った───。


「ナマエ」
「……う、」

優しく呼び掛けられる声に、そっと目を開ける。目の前にいたのは、大好きな人。手を差し出されて、その手を取って起き上がる。辺りを見渡すと、ここはどうやらミッドガルが見える丘の上のようだ。完全に夜は明けていて、空は明るくなっていた。

「クラウド…おかえり」
「…ああ、ナマエ、ただいま」

怪我ひとつないクラウドに安堵して、それから返ってきた言葉が嬉しくて、私はクラウドの腕の中に飛び込んだ。背中に回される腕と感じる体温、それから大好きなクラウドの匂い。
あれからセフィロスとどうなったのかとか、聞きたいことはいっぱいあるはずなのに、それでも今はここにクラウドがいることが何より嬉しいから。
いつの間にか集まっていたみんなが、微笑ましそうに私たちを見ていたのに気付いて、私はそっとクラウドから離れた。

「これから、どっちへ行けばいいんだろう…」
「…セフィロス、追いかけよう」

ティファが呟いた言葉に一度首を振ったエアリスがそう言った。

「そうだね。これで終わりなんかじゃない」
「ナマエ…。うん、私も行く」
「追跡ならば、鼻が必要だろう」
「…っあー!俺も行くぜ!」
「…ああ、行こう」

それぞれが決意を胸にミッドガルに背を向けた。ここから先、きっと色々ある。悲しいことも、嬉しいことも。それでも進まなければ何も始まらない。
雨が降り始めた中、ゆっくりと先のない先へ向かって歩き出す。ふと、懐かしい気配とすれ違ったような気がして、私は咄嗟に振り返った。

「───ザックス?」

確かに感じたザックスの気配。当たり前だけど、誰もいるはずがなくて。写真を入れたポケットに手を当てる。

「…ナマエ?」
「っあ、…ううん、何でもない!」

クラウドから名前を呼ばれて前を向き直ると、みんなが不思議そうに私を見ていた。首を振って返して、私はみんなの元に走り出した。

大切なものを見つけたから、私はもう大丈夫。
だからザックス、心配しないでね。あなたから助けてもらった命で、今度は私が誰かを助けたい。
いってきます、ザックス───。


to be continued...
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